ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

マギーズ・ファーム野茂

 『3055』が閉鎖しちゃったので、書いた記事をサルベージするよ。

 

入稿 2012/11/13

 

Hior Chronik / Unspoken Words (2011)

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1. she wasn't here
2. all alone
3. oper I
4. small tree
5. still foggy
6. what is love
7. call
8. sea bells
9. oper II
10. rainy yellow leave on a tree
11. you are a bright star
12. sparkles (+hidden track)

 

メランコリックなアンビエンス・エレクトロニカを奏でるギリシャのアーティスト、ヒオール・クロニック。ピアノやストリングスなどの生楽器、シンセによる空間演出、電子ノイズの挿入といった要素が見事に融合し、独自の世界を作り出している。オープニング曲『She Wasn't Here』の中で聴こえる雨音(電子音にも聴こえるが、どちらだろう?)と、枯葉を踏みしめるような足音に導かれて、彼の作り込んだサウンド・スケープの中に誘われる。

そこから始まる音世界は、ハッピーな穏やかさというよりは、物悲しさも感じさせるモノトーンの世界。そんな音の中に身を委ねているのが、なかなか気持ち良い。聴き手の想像力を喚起するインストゥルメンタル・ナンバーに加え、女性ヴォーカルをフィーチャーしたトラックも要所に組み込まれ、アルバムの表情を豊かなものにしている。

彼の音楽はデジタル・サウンドと生音、マクロなスペーシー・サウンドとミクロなノイズ音などといった相反する要素を上手く融合させている。その、対比の聞かせ方が秀逸で、聴く者を捕らえ離さないのだ。

この独特の物悲しさを持ったアルバムは、ぜひ晩秋から冬の朝に聴きたい。快晴の日ではなく、しんと冷えた曇天の朝に聴いてこの世界に浸っていたい。(Jeff Goldsmith)

 

 

 

Unspoken Words

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