中村航 / ぐるぐるまわるすべり台
大学を辞めた小林がヨシモクとゆう偽名でメンバー募集をし、まず乗ってきたフレットレス・ベース弾きの尾崎さんに提案するセッション曲は、ビートルズの『ヘルター・スケルター/Helter Skelter』。
スタンダードであり、ビートルズの曲中、もっともエッジの効いた曲。
メンバー募集の記事は内容が抽象的、これでそれぞれの解釈でスタジオに入り演奏してもマジックが生まれることもないだろうが、そこはこの物語に対してつっこむところではない。
バンドとゆうものに対する考証不足ではなく、そこはファンタジーと捉えるべきだろう。
それより重要なのは、何かを終わらせ、始めようとする決意とそこに集まってくる人々との小気味好いやり取りだ。
後半に収録、もうひとつの話『月に吠える』はメンバー募集で小林と出会う人物、てつろーとチバ側の物語。タイトルはもちろんオジー・オズボーンの『Bark at the Moon』のことで、曲はてつろーが家で流れる曲に合わせてギターを弾く場面で登場する。
『ヘルター・スケルター』とゆう曲は、古今東西様々なカヴァー・ヴァージョンがあるが、どのヴァージョンもわりと原曲に忠実だったりする。
そんな中、強烈に独自色を出しているのはスージー・アンド・ザ・バンシーズのヴァージョンか。
仮の名前で“狛犬”となったこのバンド、フレットレス・ベースとジェイク・E・リーをコピーするギタリスト。いったいどんな『ヘルター・スケルター』が出来るのか想像するのも楽しい。
そういえばスターリンの曲で、雑誌に書かれたメンバー募集の記事を延々と挙げていく曲があったような気がするんだが・・・何て曲だっけ?
ぐるぐるまわるすべり台 (文春文庫)
(2006/05) 中村 航 |
The Beatles
(2009/09/09) |
月に吠える
(2002/09/19) |