さいたま新都心駅の改札を出て、会場であるさいたまスーパーアリーナに近付くにつれ“光るツノ”を頭から生やした人が増えていった。
アリーナ前や会場内では、もうそこかしこでピカピカと赤いツノが点滅している。
ミッキーマウスの耳を付けてるやつなんてここには一人もいないぜぇ!ざまあみろ!(・・・と、思ったら2人だけ見つけて驚いた)
ネコ耳にインカム、エナメル素材のビキニはさすがに俺だけだったけどな。
轟音でアメリカン・コミック風のオープニング・アニメーションが流れていよいよライヴが始まる。
2階席から見下ろしているとよく分かったのが、マルコム・ヤングとクリフ・ウィリアムズは、常にフィル・ラッドが叩くドラム台のすぐ横にポジションをとっている。
万単位の人間を収容するアリーナにあっても、場末のライヴ・ハウスと変わらないような距離感でリズムを固めていた。
コーラス・パートのある曲で、2人は歌う直前になって4~5m先のマイク・スタンドまで歩いて行き、コーラスをとる。そして、その曲中ずっとそこにいるのではなく、ひとパート歌うと元の位置に下がり、またコーラス・パートが近くなるとマイクの前に歩を進める。こういったフォーメーションのライヴを観たのは恐らく初めてだ。
動き回るフロント・マン達のいるステージを広く使うとゆう演出上のこともあるだろうが、この、互いの空気を感じられる距離感がAC/DCのリズムを支えているのかとも思った。
「AC/DCはロックだ!」なんて評価はもうヒャクオクセンマン人の人間が叫んでいると思うが、改めてこの鉄壁のリズム隊がセンター・バックに寄り添って位置取り、自分と互いの音を確認し合い、オーストラリアにある“エアーズ・ロック”のような巨大一枚岩の鉄壁グルーヴを醸し出しているのだと感じた。
(AC/DCの歴史でリズム隊はメンバー・チェンジしてるじゃないか・・・とゆうツッコミはとりあえず無視する)
メンバー中、最年長のブライアン・ジョンソンはノッシノッシとステージ左右、中央花道を歩き回り、ときには“地獄の鐘”にヒョイと飛びつき、その搾り出すような金切り声で聴衆と対峙していた。
その太い腕で、会場中から迫ってくるオーディエンスのパワーをガッシガッシと受け止めているような、圧巻のパフォーマンスだった。
楽曲の力、グルーヴ、愛すべきバカっぽいステージ・セット演出、まったく飽きることなくあっという間にアンコールまで駆け抜けた。
本格的な春も近い3月の夜・・・終演後会場の外に出ると、ライヴの熱気をクール・ダウンするように、新都心には冷たい風が吹いていた。
・・・おしまい。
・・・って、AC/DCのライヴに行って、アンガス・ヤングのことについてひとつも言及しないとゆう実験的なレポートを書いてみたよ!!ムハハッ!!
ウソウソ!ちゃんと書くよ!
リズム隊が作り出すスケールの大きい鉄壁のグルーヴに乗って、アンガスは縦横無尽に暴れまくるワケですわ。
しがない日常に縛られた俺達の代わりに学生の格好でステージを走り回り、駄々っ子のように振舞えない俺達の代わりに、せり上がりステージの上で足をジタバタジタバタとしてくれる。
世の中に対してケツを出せない俺達の代わりに、大観衆の前でケツを出してくれる。
ケツを出すのは最高。・・・いや実際にはケツそのものは出してなかったけどね。
社風によっては会社の忘年会でケツ出すヤツもいるかもしれない、学生サークルの飲み会でケツ出すやつはけっこういるだろう。でもそんな酒の席でケツを出すことは、途方もなく、く・だ・ら・な・い・のだ。
このワタクシ、実際にケツ=自分の臀部を出したい性癖は持ち合わせていないが、この世の中、精神的な部分でケツを出しながら生きてゆきたいものだ。それにはどんな方法、生き方があるだろうかと帰り道を歩きながら考えていた・・・
そんな感じのスーパーアリーナ、新都心の夜でした。
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