ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

Say Say Say

俺はボビーに、自治会規約の英語版を作って渡すことにした。

これは誰がやるべき仕事か?自治体、市の仕事ではない。自治会規約は自治会が作ったものだから。会長である俺の仕事でもない気がするけど…でも誰かがやらないと自治会のルールが伝わらないからそれを守れとも何とも言えない。

全文を英訳するのは面倒だし、いつまでたっても完成しなそうなので、「◇◇は名称△△とし、〇〇をもって〇〇とする」みたいな、条文のための条文みたいなくだりは端折った。すぐに生活と直結したり、年間で金銭のやり取りがあるような部分は漏らさないように作った。

前例がないもので判断が難しいが、実は俺のした行為は良いことではないとも思う。本来は規約全文をすべて訳さないといけない。元の自治会規約は1人が作ったものではない。それを俺だけで訳してしまうと、間違っているかのチェックが出来ない。文章として間違っていなくても、英語になる時点で解釈がずれたりするかもしれない。誰がチェックするの?というか、役員会を召集して話し合ったって、英訳があっているかどうか検証できるやつがいない。総会を開いたっていないだろう。外国人世帯が入ってきて、規約をどうしようなんて概念が今までないし、それを総会で話し合おうなんてやってたら動きが遅いし面倒だ。つまりもう、なんだかよく分かんないけど、必要っぽいから俺の独断でやってしまおうって感じ。

俺は英語がからっきしなので訳は、回覧版と同じくグーグル先生にやってもらった。日本語での条文的な言い回しは、そのまま訳すとメチャクチャな英語になる。オリジナルの日本語文を細かく分けて、直訳できないっぽい言葉はあらかじめ英語で分かりやすそうな言葉に置き換えて作った。そうして、日本語→英語→日本語と訳を繰り返すとなんとなく正しいっぽいかなって文章になってくるので、そうやって作っていった。だからもう時間が超かかるんだよ…

作業は仕事から帰って夜に少しずつ進めて、自治会規約の英語版は、完成までに何週間もかかった。規約はポストに入れた。

ある、雨降りの夕方、スーパーに行こうと家を出たら、自転車に乗ったボビーと出くわした。「こんばんはー」と言ったら、彼は「アー、アリガトネー」と言った。俺は「あー、ルール・ブックねー。オーケーオーケー」と言った。

この話は基本的に、親切にしたらお礼を言われたという、自慢話です。