ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

Breitengrad 20

ボビーが大掃除に不参加って、言いに来たところまで書いた。

大掃除が始まった。春の除草は伸び放題の芝を刈るのが一苦労だ。冬の大掃除だと、とにかく枯れ葉が多くて、容量の大きいゴミ袋もすぐに満杯。それが次々と増える。枯れ葉を拾ったそばから、風が吹くと大量の枯れ葉が落ちる。参加者は皆、必死に枯れ葉と戦った。俺は会長なので、あっちをこうしてください、こっちをこうしてくださいと指示に忙しく、掃除の実働はそれほどやらない。そうこうしているうちに、何故か突然掃除の現場にボビーが現れた。

教会に行くまで、少し時間がとれたのだろう。時分も掃除をすると言いだした。予想外の展開だ。放棄や熊手や塵取りは既に出払っている。せっかく来たのにそれじゃよろしくない。俺は0.5秒ほと頭をフル稼働して、考えた。そうだ、方々で次々と完成する、枯れ葉で満杯のゴミ袋を集めさせよう。本当に方方方々各各各所で、次々とゴミが出るので、これが結構な仕事量となる。それを集積場所まで持って行かせる。

横浜やら、東京のどこそこと違って、外国人慣れしていないここの住民は、いきなりどデカい外国人が現れてむんずとゴミ袋を両手に掴んで持って行くのに面喰っていたが、ボビーは次々とゴミを集めた。12月の寒さと、ゴミ集めなので素手じゃ悪いなと思って俺の手袋を薦めようと思ったが、彼の手には明らかにサイズが小さくてやめた。

20分くらい経ったか、ボビーがもう時間なので、抜けて教会へ行くと俺に告げた。そうか、ここまで掃除に付き合ってくれてありがとうと送り出す前にひらめいた。皆にちょっと掃除の手を止めてもらって、ボビーを紹介することにした。俺は防災用に置いてあるトラメガを持ち出した。そして、彼は日本の暮らしで分からないことが多々あると思うので、みんな助けてあげてねとかなんとか演説した。一見優しいように思えるが、これは単に、俺自身の、会長職やってる感をアピールするためである。それと、近所同士で人種の違い、言葉の違いなどからお互いにコミュニケーションを閉ざしていると、小さなことでも大きなトラブルになるので、その余計なトラブルを防ぐために彼を皆に紹介した。つまり会長の俺にふりかかる面倒を前もって回避するためである!

一通り俺のアジテーション演説…じゃなくて新入居者ボビーの紹介が終わって、俺はボビーを送り出した。来ないと言ってたのが来てくれて「どうもね、アリガトね」と言ったら、ボビーから手を差し出してきた。ボビーも「アリガトウ、アリガトウ」と言って俺たちは握手を交わした。

ここに、当自治会有史以来の、歴史的和解が成立したのである。