GASTUNK / HEARTFUL MELODY (1999)
俺が通っていた高校、俺の学年でバンドをやっているやつは、街の貸しスタジオではなく、農家の納屋で練習していたことは、以前BOØWYの章で書いた。
ある日、俺がその納屋に行くと先客が居た。うちの制服、詰襟学生服ではない、ブレザーを着て頭髪は金髪。椅子に座って、納屋に置いてあった誰かのギターを弾いている。
見た瞬間、「こいつがオチョウ。伝説のパンクス、オチョウか!」と俺は気付いた。
同じ中学校から、近隣にある、俺とは別の高校に進学したやつらから、オチョウのことは聞いていた。その、同級生たちと連れ立って納屋に来ていたのだ。
オチョウは、後から納屋に入ってきた俺に、『To-y』のイサミよろしく、「ギヌロ」と睨みをきかせた。…ということはなく、何かフツーに友好的な会話を交わしたと思う。
オチョウは、ツマミを目いっぱい回してリバーブをボワンボワンに効かせたヤマハのアンプでギターを鳴らしていた。弾いている曲は、ガスタンクのインストゥルメンタル・ナンバー、『黙示録』だった。
「ズンズクチャ~♪ジャララジャララ~♪」と、不穏なギター・リフを弾くオチョウ。もちろん、数小節に一度、「ギ~ッ♪」と、ピッキング・ハーモニクスを入れている。
そして…
そして…えっと…
他に何か弾いてたっけ?オチョウ。『黙示録』を弾いてたことしか思い出せない。あの曲って、ギターのフレーズは2パターンしかないじゃん。ずっとそれの繰り返しじゃん。伝説のパンクス、オチョウは他に何かレパートリーはあったのだろうか?『黙示録』以外になにか弾けたのだろうか。
その後、どうしたんだっけ?地元の公民館ライヴで何度か顔を合わせた後…オチョウは死んだんだっけ?死んでないか。
伝説のパンクス、オチョウの、何が伝説だったかというと、忘れちゃった…忘れたよ。
いろいろ忘れてしまったので、誰か…俺が覚えてなければ誰も覚えてないか。オチョウは今も元気かな?いやそんなに、思い入れのある登場人物でもないけど。俺ヒストリーの中で。
俺が思い入れないんじゃ、この記事は誰が欲しているのか?
HEARTFUL MELODY
(1999/10/21) GASTUNK、GASTANK 他 |