ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

パワースレイヴ~死界の王,オシリスの謎

泉麻人 / 泉麻人のコラム缶

わが青春の‘80年代が再評価され始めたのは、‘90年代の後半~‘00年代初頭にかけてだろうか。

その頃になって、‘80年代を回顧するオムニバスCDのリリースが多くなってきた気がする。(データに基づいて言っているわけではなく、ぼんやりとした記憶、印象でしかないので、間違っていたらスマン)

映画だと、ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督の『1980』と、みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督、宮藤官九郎脚本の『アイデン&ティティ』がともに2003年の公開。大槻ケンヂ原作、ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督の『グミ・チョコレート・パイン』が2007年公開である。

時代が変わってすぐは、過ぎた時代に対する気恥ずかしさとゆうか、少し前の自分に対する近親憎悪のようなものがあり、それが過ぎると過去は美化されるとともに、リアルタイムで知らない下の世代からの評価も加わって10年位前の日々が輝いてくるのだ。そのサイクルはどの時代でも同じようなものだろう。

そんな感じで、今となっては自分の中でもすっかり対象化された‘80年代であったが、この1980年~1988年にかけて方々の雑誌に書き散らされたコラムの数々を1冊にまとめた『泉麻人のコラム缶』を読むと、そこに書かれている“あの時代”は、今の自分にとってあまり居心地の良いものではなかった。

何だろうかこの感情は・・・まるで“何年ぶりに昔の友人に会うことになり、良い思い出ばかりに脳内変換されているので楽しくなると期待して出かけたが、再開して3秒会話を交わしたら、その喋り方を聞いて「うわ~、そういえばこいつ昔からこうゆうヤツだったよな」と、忘れていた嫌な記憶まで思い出してしまった”ような感覚である。(なんだその例えは?)

とにかくチャラい。チャラチャラしている。‘80年代の“ナウ”な佇まいに愕然とした。

とくに大学生や若手社会人あたりの生態に言及している描写が読んでいて痛い。

いやべつに、なにもヒリヒリとした感触のハードボイルドなコラムを読みたかったわけじゃないし、自分だってザラついた心で眉間に皺よせてあの時代を駆け抜けてきたわけじゃないのだが。基本的にヌボーっと突っ立って過ごしていたわけだし。

なんとも“ケーハク”な‘80年代が詰まっているこの本。そうはいっても泉麻人なので、そのような風俗を書いていてもそこには批評精神が宿ってはいるし“あとがき”の中でも冷静に分析している。

それを踏まえてもこの居心地の悪さはなんだろう・・・と思っていたが、それは泉麻人が新宿区出身で、中学から大学まで慶応とゆう経歴だからだろうか。

・・・まあ平たく言えば“やっかみ”ですね。

チャンチャン! 

泉麻人のコラム缶 (新潮文庫)泉麻人のコラム缶 (新潮文庫)

(1991/05)

泉 麻人

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