ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ディヴォーテッド・トゥ・ユア・フィア

大槻ケンヂ / オーケンの散歩マン旅マン

 

先日、インド関連の本のことを書いたときに、ちょっとだけこの本も登場したのだが、実はそのとき、まだ買ったばかりでちゃんと読んでいなかったのだ。その後読了した。

一応、紀行ものであって、海外の話まで書いてあるのだが、『オーケンののほほんと熱い国へ行く―インド・タイ』 のようにガッツリと書かれたものではなく、小さなネタが集まっていて、読み応えとしてもガツンとくるものではなく、もっと軽い感じの読み応えだった。

ただ、それが悪いわけではなく、オーケンが各地をホテホテと歩いている様子をパラパラと読んでいると、なんとなく心がホッコリするのである(と、オーケン的な擬音をねじ込んでみたよ!)。

同じような効能があるものに椎名誠『日本細末端真実紀行』があって、椎名誠の中では軽い紀行ものであるこの本には、無人島での天幕生活も、世界の辺境に挑む冒険も登場しない。でも読後の満足感は大きい。この本のことはオーケンも自書『のほほん雑記帳』の中で“ノドカ本”“精神安定本”と評して紹介している(←これ、書くの2回目だな)。

書かれた時期が、筋少後期というか末期のときで、本文中、最後のツアーが描かれていたり、会話の中で「活動休止しちゃったんだよ」というセリフが登場したりする。そういった、音楽活動的には厳しい時期に書かれた本で、しまいには「何もかもが嫌になり一人旅に出た」なんてことになったりしているわけだが、オーケン独特の文体がそうさせるのか、読んでいるこちらはヒリヒリとした悲壮感を感じるのではなく“のほほん”と読めてしまう。オーケンのエッセイにはそういった効能があるんだよなあ。

筋少の音楽を聴いてもその感じは出てこないし、同じ文章でも、小説だとまた違った感触なので、やはりエッセイならではのものだろう。オーケン椎名誠をそう評するように、オーケンのエッセイも私にとって精神安定本なのである。

とかなんとか書いているうちに、なんだか旅に出たくなってしまった。どうしてくれるんだ。

オーケンの散歩マン旅マン (新潮文庫)オーケンの散歩マン旅マン (新潮文庫)

(2003/05)

大槻 ケンヂ

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