ヴァン・ヘイレン / 1984 (1984)
Van Halen / 1984
デイヴ・リー・ロスが歌うヴァン・ヘイレンの凄さ、特にこのバカ売れした『1984』の何が凄いって、アレですね。バカ売れっつうのは、(当時はヘヴィ・メタルがブームだったとしても)メタル、ハード・ロックを好んで聴く層以外の一般層を巻き込んでいかないとメガ・ヒットにはならないと思うんだよね。そうなると、必要なのは分りやすい泣きの要素だと思うんだな。それがこのアルバムにはまったくない。
ヴォーカルがサミー・ヘイガーに代わってからは、演歌的にコテコテな曲はないにしても、それなりのスローなバラード的ナンバーや、そっち方向に感情を揺さぶるポップ・ソングがある。『1984』には、曲によってハード、ポップ、押しと引きはあるんだけど、泣きがない。デイヴが歌うロックの猥雑さ、スーパーなギターのテクニック、印象的なシンセ際ザーのリフはあるんだけど、泣きがない。というか、どっかに忘れてきてしまったように欠落している。アメリカン・ハード・ロックと、ここで開花したポップのセンスで、ここまで売れたのって凄いと思うんだよね。
俺は、サミー時代の、ハードなナンバーではない、ポップ・ソングの何曲かはすげー好きで、どっちの時代にもそれぞれ魅力があると思うんだな。だからどっちかに肩入れするつもりはない。でも、サミー時代にデイヴ待望論というのはけっこうあって、サミーに対して歌える曲のバリエーションが沢山あるわけでないにも関わらず、求められていたデイヴつうのはある意味凄いと思うんだな。
あ、ちなみにデイヴのソロ曲で俺が一番好きなのは、『イート・エム・アンド・スマイル』のラストに入っている、フランク・シナトラのカヴァーだったりする。 アレはデイヴのキャラ、魅力の一部分を抜き出して拡大したものでもあるけど、ある意味それを上手く提示してるとも言えるんだよね。魅力であり限界でもあり、でもやっぱ魅力みたいな。
1984
(2012/02/03) |