毎年恒例、師走のウイラードライヴ。今年はO-Westではなく、代官山Unitでの開催。
…ということなので、例年のように道玄坂を上がることなく、渋谷から東横線で代官山へ向かうワケだが、その前に渋谷を徘徊しようと少し時間に余裕を持って馳せ参じた。
しっかしアレだ。街を歩くにあたって、渋谷という場所は何度訪れても居心地が悪い。立ち止まれない街という感覚が強い。ライヴ会場直行直帰ではもったいないからと、周辺を歩くことがよくあるが、ほとんど徒労に終わる。
同じ大都市でも、新宿の倍くらい所在なさを感じる。
なので、何軒か書店や東急ハンズを冷やかしたところで時間になってしまった。 つうか、東急ハンズ渋谷店の構造が疲れる一因だったりもする。
会場に向かう前に飯を食わなくては…すき家で”炭火とりたま丼”を喰らう。
そう、ここまでは、渋谷の磁場に居心地の悪さを感じながらも順調に事は運んでいた。注文してから数十秒で出された炭火とりたま丼を前に、ぐっと睨みを効かせ、構えの姿勢をとる。お一人様カウンター席。上着のダウンジャケットを着てショルダーバッグも肩から下げたままの格好なので、ジャケットの袖が丼に触れないよう、慎重を期しながら丼ぶり越しにサラダのドレッシングをとり、野菜にかける。紅ショウガと七味唐辛子はとりたま丼にかけるのは邪道なのだろうか?まあいいや、タダだから、かけてしまえ。
そして、丼に添えられて出てきた卵を手に取ったとき、事件は起こった。
容器のフチで卵をコンコンと叩く…割れない…
卵の殻が割れない。少し力を入れる…割れない。何だこれは?ゆで卵じゃないよな?
更に力を加える。すると、「バキっ!!」っという音とともに予想外の勢いで殻が割れた。しまった!!これは、温玉じゃないか!!生卵じゃないのか!力加減を誤った!1/3ほどの中身が、お盆の上に零れ落ちてしまった。全滅じゃ…ないけど…全滅じゃ…ないけど。
こぼれてしまった卵ももったいないし、両手が黄身やら白身でベタベタだ。そして、段々とベタベタがカピカピに変化してくる。2、3滴だがダウンジャケットにも跳ねてしまった。こんなとき、喫茶店やファミレス、せめて、せめて同じ牛丼屋でも田舎のロードサイド店なら「あらよっと。ちょいと失礼」と、事故処理を行うところだが、此処は都会も都会、渋谷の一角にあるすき屋。上着を脱ぐこともバッグを下ろすことも憚られる窮屈なカウンター席。だめだ、どうすることもできない。トイレも先ほど、丼が出される前に入ったが、ドアを開けるにもよっこらっしょと身体を避けなければならない感じの狭さだ。トイレで手を拭くなど、体制を立て直し反撃に出るのもメンドクサイ。いいやもう!このままで食おう!!
とりあえず、生き残った卵を丼にかけて、口に掻きこむ。ベタベタな手でまた服に触れたりして、これ以上被害が広がらないようにしなくては。慌てて食っているので口の周りも汚れがちだ。うう…ダウンジャケットの襟はハイネックになっているので、そっちにも付いてしまいそうだ。丼の味はなかなか美味しいとも思うが、今は味が半分しか分からない。こんな状況だと、つい早食いになってしまう。健康だったときならまだしも、今の私に早食いは禁物だというのに。
そして、分厚い上着を着たまま早食いをしているので、首周りが少し汗ばみ、鼻水もチョチョ切れてきた。
そして、完食。
食べた。食べたけど、何なんだよ…この敗北感。
初めて食するメニューとの出逢いをじっくりと堪能することもなく、ベタベタ、カピカピの手でそ~~っと財布をつまんで会計を済ませ、外に出る。強烈な閉塞感からは開放されたが、まだ油断はならぬ。急ぎ足で近くの東急百貨店に入り、トイレへと向かう。いつも、大型ショッピングモールに出かけるときなどはそうそうトイレ難民になることはないのだが、そこは造りの古い百貨店、トイレの数も少ないし狭い。埋まっている個室に絶望しながら複数の階を何往復もしてようやく空いた個室にもぐりこみ、チーンと鼻をかみ、手を拭き、こびり付いた卵の不快感を払拭した。
店で見た他に、服の被害がないかを確認し、内心穏やかではないが何食わぬ表情を装い、百貨店を後にする。外に出ると、陽のとっぷり暮れた歳末の渋谷には今シーズン一番の寒風が、吹いていた。
俺は…俺は…何に負けたのだろうか?
…って、うわーーーーーーーーーーーーーっ!!
ウイラードのライヴについてまだ全然書いてない!!
嗚呼、またこんなことに文字数を費やしてしまった。
とりあえず東横線で代官山に向かう。初めての代官山Unit。駅から近いにも関わらず、先ほどの事件のせいか焦ってしまい、道に迷って人に場所を聞いてしまった。
余裕をもって家を出たのにも関わらず、ハプニングのせいで開演予定時刻の19:00過ぎに入場。まあたいがい30分押すワケだが。すでにフロアは満杯。後方に陣取ったが、このハコは最後方が一段高くなっているので見やすい。
しばらくDJタイムのレコードを聴いた後、「ビ~バップ♪ルラッ!!♪」のSEでメンバー登場。KLANのベースはスティングレイ。西尾氏は今まで見たことのない、50'sロックンロールチックなシルエットのギターを抱えている。遠目なのでヘッドのメーカーロゴが確認できないが、グレッチのジュピター・サンダーバード。ZZ TOPのビリー・ギボンズと、ボ・ディドリーの“Bill-Bo”か?
そしてJUN登場。
『Ghost Town Gang』でスタートし、2曲目で12月の風物詩『Christmas Raid』が登場。イントロの前にパイプオルガンのSEが流れたんだっけかな?フロアは皆、「merry christmas♪」に呼応しホールドアップ。
『Horror Train』を挟んで、これまた冬の歌『Snowy White』。
MCでメンバー紹介。西尾氏が腰を痛めていることに触れ、冗談で笑いを誘ったのと、再来年にバンドが満30歳を迎えることを話すと、場内が沸いた。
私がウイラードのライヴ観戦に復帰した頃は、曲間の静寂などで冷えた空気を感じたが、ドラマーが大島氏に固定し、バンドが25周年を迎え、新作やリイシュー盤が順次リリースされだした頃からか、彼らのライヴはクラウドサーフで転がってきた観客がステージ上のJUNに接触してしまうようなアクシデントなどが起こらない限り、全体の雰囲気は概ねピースフルなものになってきていると思う。そして、JUNが今夜も好調なのは、歌詞の内容とリンクした振りというか、パントマイムというか、ジェスチャーが多く出て、それのキレが良いことにも現れていた。
『Silly Games』で、ギターソロのハモりは、JUNのヴォーカルラインで再現。久々(だっけかな?)の『Babylon Break Out』。
本編ラスト『Return In Triumph』を聴いていたら、今年亡くなったSHINのことを思い出した。何故だろう?今回そのことについての言及はなかったし、スタジオ盤でSHINがプレイしていた曲は他にも沢山演奏されたが、私は何故かこの曲でSHINの顔が脳裏に浮かんだ。
アンコールは2回。『Searching For Your Eyes』で締め。今日は深夜の第二部が開催されるが、私はおネムの時間なので帰路につく。
会場内の暑さと裏腹に、外はとても冷えていた。そして道玄坂の喧騒と違い夜の代官山は静かだった。
代官山駅からまた東横線で渋谷に戻るか、中目黒まで歩いて日比谷線に乗るか、迷っているうちに、選択の迷いではなく、なんと道自体に迷い、てきとうに歩いていたら結局渋谷駅前に出た。
そんな感じで今年最後、私のライヴ観戦は終了したのであります。
チャンチャン♪
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