ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

キエフの大門

元日から2泊3日の旅に出た。 ”青春18きっぷ”を使う旅である。先日、熱海に行って5回のうち1回分は使用した。あと4回、使用期限内にどうやって使おうと頭を悩ませていた。

ここ何年も、元日は浅草をはじめとして、都内の初詣スポットをグルグル徘徊するのが恒例となっていたが、今回は初詣と18きっぷの旅を兼ねて、1月1日から出かけることにした。東京で正月の空気を感じることができないのは若干寂しいが、これもまた青春。つうか、東京人じゃねぇし。

 

朝6時の大宮駅。まだ外は暗い。JRを使う18きっぷのスタートは大宮からだが、地元の駅は5時台最初の電車で出た。朝食を作るやら何やらのため、午前3時半に起きた。大晦日は紅白を観、『ゆく年くる年』が終わってから寝たので、まあどうやっても眠い。

大宮の駅で、長い道中に備えて用を足そうと、トイレの個室に入った。“エキナカ”が出来てからは、トイレも改装でキレイになり、快適な大宮駅である。と、思いながらトイレの中に居ると、大晦日にハメを外して一晩中呑んでいて限界を超えてしまったのだろう。向かいの個室から、嘔吐する嗚咽が聞こえてきた。せっかくトイレがキレイなのに、何なんだよ。旅の始まりに、とんだ祝砲を鳴らしてくれるぜ。それよか、一年の計は元旦にありだっつうの、他人のゲロ音聞いててどうすんだ。

大宮のエキナカ。まだほとんどの店は閉まっていたが、出発も近い頃、駅弁の店が開いた。何を買おうかと品定めしたが…やめた。同じく駅構内にある、コンビニの弁当を買った。価格にすると駅弁の半額以下である。何故、そんなことをしたかというと、大宮はまだ近所だし、食い物に対して、頭が旅価格仕様になっていないからだろうか。遠い地方、ご当地の名産を食うようなテンションで1,000円以上もする弁当を買う空気ではないのである。

つうかさあ!そんな心の葛藤をひとつひとつ描写してたら、たかだか2泊3日の旅行記が、とんでもない長文になてしまうような…

6:11 大宮発 JR湘南新宿ライン下り 快速 小田原行き 

湘南新宿ラインに乗り込み、当然のようにうたた寝する。都内を抜けるあたりだろうか、目が覚めると、ちょうど初日の出が登ってくるところだった。実際の日の出時刻より遅いが、雲がかかっていて少し遅く顔を出したのだ。 

7:56 平塚発 JR東海道線下り 普通 熱海行き 8:06着

ネットで調べて、当初の予定だと小田原で乗り換えるつもりであったが、自分が小田原から乗ろうとしている列車が手前の平塚始発だというアナウンスに促され、予定外に平塚で下車。乗り換える。

8:47 熱海発 JR東海道線下り 普通 島田行き 10:39着

熱海は12月に訪れたばかりだ。また会ったな。熱海。

 

海側を向いたシートに座ってボーっとしていたら、富士山を通り過ぎてしまった。慌てて初富士を拝む。

 

 

10:49 島田発 JR東海道線下り 普通 浜松行き 11:34着

11:43 浜松発 JR東海道線下り 普通 豊橋行き 12:17着

湘南新宿ラインから東海道線豊橋まで、景色のよいところはあるが、車内の旅情といったものは希薄だ。席がずっとロングシートだし、平塚からは、立ちが極端に多いわけではないが常に席が満杯。複数の線が乗り入れる駅では人がどっと降りるが、すぐに同じ人数が乗ってくる。そして利用者が少ない区間に入ると、車両編成も短くなる…って、当たり前だけど。朝早く出て、豊橋着が12時を回るが、それまでは車内で飯を食う感じではない。 しまいには島田から席にも座れず、立ち乗車になってしまった。

12:21 豊橋発 JR東海道線下り 普通 大垣行き 13:46着

 

豊橋で新快速に乗ってから、席は転換式のクロスシートになり、しかも空いているし、突如として快適な旅となった。ちょうどお昼時にもなり大宮で買ってきた弁当も食べた。うひゃあ最高!

昼食後、先ほどまでと違いゆったりとした環境で持参した文庫本を読む。たまたま読みかけだった本を持ってきただけだが、万城目学著『加茂川ホルモー』は、京都を舞台とした物語で、これから行こうとする場所がいくつも登場する。さらに、これも狙ったわけではまったくないが、もう一冊、持ってきたのはみうらじゅんのエッセイ。みうらじゅんは京都出身だし、エッセイの中でもいくつか京都について言及している。

 

14:12 大垣発 JR東海道線 普通 米原行き 14:47分着 

大垣付近からだったろうか、始めは遠くの山に雪が積もっているなあという程度だったが、どんどん周りが雪景色になってきた。日本海側も回るので雪は見ると思っていたが、これは予想外だった。

14:50 米原発 JR東海山陽線下り 新快速 姫路行き 15:43京都着 

9時間以上かけて京都に到着。京都は中学校の修学旅行以来なので四半世紀以上ぶりだ。数年前、大阪に行ったときは素通りしてしまった。待たせてごめん!京都!!PASMOは使えないんだね!関西圏!!

と、京都駅で終了ではなく、JR奈良線であと一駅、稲荷まで行くのである。初詣しなくては。初詣。

15:47 京都発 JR奈良線下り 快速みやこ路快速 奈良行き 15:52稲荷着

 

稲荷駅から伏見稲荷へと伸びる参道は、たいへんな混雑であった。人ごみに突入し、京都の正月気分を味わう。

 

ウッドストック・フェスか?ヤスガーズ農場を目指す群集。

 

初対面のお稲荷様に、私利私欲に塗れたお願いをしこたま投げつけた。

ウソだよ!ウソ! みんなの幸せ願ったんだよ!

お参りを終え、振り返ると、京の空に元日の陽が落ちるところであった。なんという光景。なんという正月であろうか。

御守りを買った。おそらくジョ、ジョ、ジョ、女子大生のバイトであろう巫女さんが、関東とは違う「500円になります」の「す」が上がるイントネーションで喋ったとき、ガツンと京都を実感し、御礼に「おおきに」なんて言われ、私はその場で失禁し、白目を剥いて卒倒、失神してしまった。

伏見稲荷から、なんだかSFチックな巨大建造物の京都駅に戻り、京都タワーを見上げ、バスで祇園に向かう。

どうもアレだな。京都はバスを使って上手く回らないとちゃんと観光できないな。フリーパスでも買って、1日2日かけて観ないと。見どころが多すぎて、しかも分散しているので、現地までの移動に時間を割かれる18きっぷの旅と、相性が良いとはいえない。

祇園にある八坂神社に詣でた。素戔嗚尊が祀られている神社へと登る階段で、派手な若者がインリン・オブ・ジョイトイのポーズをとって騒いでいた。そういえば通りにも、地元なのか近隣の県からなのかヤンキー度の高い車が多かった気がする。

夜の祇園を徘徊。さすが、良い雰囲気だ。が、もうすでに足腰が痛い。泊まりの荷物を詰めたバックパックを背負っているので、いつもより足腰が痛い。

中学校のときに修学旅行で訪れ、お土産の“おたべ”といっしょに、何故かランディ・ローズの缶バッジを購入した新京極。こ宿のチェックイン予定時刻が迫っていたので、駆け足での見学で、通りの雰囲気を感じるだけになってしまった。じっくり観て、あの頃の自分と向き合うことは出来ずに残念。何故、修学旅行先でロックのバッジなんか買ったのかというと、まあそれで自分のアイデンティティを主張するという青春ノイローゼだったんだと思う。

宿に向かう前に、新京極近くになるトンカツ屋で夕飯を食らった。18きっぷ使用、安宿に宿泊と徹底したプアープランの反動で、メニューの中からト、ト、ト特上ロースを選んでしまった。が、キャベツとご飯はおかわり自由で、キャベツを死ぬほどおかわりしてしまうところはやはり貧乏臭さが出る。

地下鉄で京都まで戻り、京都からJRでひと駅。西大路にある宿にチェックイン。相部屋に泊まる、所謂ゲストハウスで、かなり安い。べつにそこまでしなくてももう少し出せば個室のホテルに泊まれるが、せっかくの機会だからと思いこちらにした。見ず知らずと相部屋の経験というのは、山小屋に泊まったのと、船中泊の雑魚寝ぐらいかな。もっとも、山小屋は子供の頃で大人の引率があったし、船は友人たちと乗ったので、単独行動だと記憶にない。

部屋には先客が居た。7人部屋に入ったが、元日の夜に泊まるのは彼と私の2人きりだった。聞くと、その青年は横浜から来て明日、四国へと向かうそうだ。ここまでは私と同じく東海道線で来たのか。知らぬ他人と相部屋でどうなることか、不安と好奇心を抱えて京都入りしたが、2人だけだとゲストハウスの醍醐味も半減というところか。もっと多かったら楽しかったかもしれない。

9時半過ぎにチェックインし、10時を回る頃には青年が「もう寝る」と言ったので、そこからごそごそ動くのも悪いし、だいいち部屋の外などは寒いので、シャワーも浴びず、ダウンジャケットを脱ぐ以外はさっきまで街を歩いていた格好。セーターもジーンズもそもままで、ベッドにもぐりこみ、私も寝ることにした。

こうして、2012年の1月1日が終わった。

旅は、2日目へと続く。

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