ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ザ・ダウンワード・スパイラル

椎名誠 / 日本細末端真実紀行

椎名誠の作品については、完全フィクションの小説より、自伝的な小説やエッセイの方が断然好みだ。

エッセイ・・・のエッセイにもいろいろあって、世界各地の辺境を旅するハードなものより、『あやしい探検隊』のシリーズで、仲間達とワイワイやっているのを読んでいるのが楽しいし、『あやしい探検隊』もシリーズ後期はメンバーも変わり本格的冒険の旅、海外が多くなるので初期の活動、日本国内のなどでのワイルドかつバカバカしい天幕生活の方が好きだ。

そんな中にあって、この『日本細末端真実紀行』は、雑誌『るるぶ』に連載されていたからか、神戸異人館、札幌のキャバレー、当時開通したばかりの東北新幹線にぶらりと乗って北に向かったり、瀬戸内海の島で昼寝してみたり、気取った渋谷スペイン坂や不自然に管理された倉敷の美観地区に文句を言いに行ったり、人口海岸に変わってしまった故郷の幕張に行って絶望してみたりと、移動距離、所要時間や交通の便が良い悪いはあるが、けっこうユルい、気ままなが並んでいて読んでいて心が休まる。

渋谷や池袋サンシャイン60など、旅とゆうほどでもない章もある。

そして、独特の軽妙な文体が何気ない旅の風景をとても魅力的に映し出している。オーケンが“ノドカ本”“精神安定本”と評していたのも頷けるネ。

この本を読んでいると何気ないがとても魅力的に書かれていて、「やはり物や出来事を表情豊かに捉える力が必要なんだなあ。感性が鈍いと旅行などに行ってもずいぶん損をするなあ・・・」と、博物館や展示イベントなどに行っても、気が付くと駆け足で観終わってしまい無感動無表情と批判されてきた私は心が痛くなるが、本の中、網走に流氷を観に行く章では13万円もの交通費をかけて行ったわりに流氷を目の当たりにしての感動が3分も続かなく、寒さに耐えながらもう少し粘ろうとしている場面を読んで、「こんな面白い文章を書いている人でもそうゆうことがあるのか」と少しほっとした。

まあそのこと自体をオモシロおかしく書いているから凄いのだけれど。

厳寒のオホーツク海とは条件がだいぶちがうが、観光地でけっこうな坂道山道を下ってを見に行っても、5分も眺めているとそこからどうしたものかとゆう感情が湧いてきたりする。あの勾配を、今度は登らなきゃとなると、もう少し眺めていないと元が取れないなぁと思ったりする。そんなときは椎名誠が唸ったのと同じように「それからそれから・・・」とゆう思いが頭をよぎる。

しかし、昨夏のお台場1/1ガンダムは、飽きずに何時間も眺めていたなあ。周りに露店が並んでいるのと30分に一度のミスト・ショー以外は何のアトラクションもないのに、昼食後から陽がとっぷりと暮れるまでその場を動けなかったのだ。

あの感情はいったい何だったのだろう。

おっと、少し話が逸れたが、この本を読んでいると感性が鈍い鈍いと言われ続けている私でも、あまり気張らない感じの、ふらりと出かける旅をしたくなってしまう。とゆうことだ。

日本細末端真実紀行 (角川文庫)日本細末端真実紀行 (角川文庫)
(1986/05)
椎名 誠

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