ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ダメージ・ダン

 

比嘉武志率いる琉球ヤクザ、覇王会のシマを荒らしたナツとユキ。そして何の繰りあわせか、彼らの仲間になったカホ。その三人を追って、私は米軍基地の街、福生を訪れた。横須賀では、彼らの姿をとらえることが出来なかったのだ。

基地の前を走るルート16のロードサイドには、アメリカの空気を直輸入したような店が並ぶ。にぎわっているといった程ではないが、この雰囲気を味わいに来たと思われる、地元民ではなさそうな人々が何組か歩いていた。洋服のセレクトショップ、雑貨屋、ヴィンテージ家具屋、飲食店など、どれもアメリカンな店構で立ち並んでいる。バーなどを除けば、横須賀のドブ板通りよりこちらの方が見ごたえあるように思うが、どうだろう。

ひとつ疑問に思うのは、このアメリカンな街にある、アメリカン・ヴィンテージ雑貨を扱う店。これは誰を相手に商売しているのだろう?基地で軍務に就く米兵は、アメリカの古い雑貨やおもちゃを買うのだろうか。日本人だって和物の骨董品を買ったりするから、買うといえば買うのだろうが、主なターゲットは、アメリカの雰囲気を求めてやってくる、日本人なのではと思ったりする。だとすると、元々米兵相手の商売でアメリカンな装いになった街は、二次的な要因でデフォルメされた、アメリカンな雰囲気を演出する、日本産のアメリカなのか?

ルート16からひとつ通りを入ると住宅街があり、その中に何軒かの米軍ハウスが確認できた。一般市民の個人宅なのだろうから画像がないが、福生ならではのよさ気な雰囲気であった。ユキらが住んでいた、青く塗られた米軍ハウスは何者かの手による放火で消失。その後、またユキらが自前で建て、住んでいたようだが、確認できなかった。その家も青く塗ったのだろうか。もっとも、自分で建てたのなら、それは米軍ハウスとは呼べないか。

ストリート・スライダーズZIGGYジュン・スカイ・ウォーカーズらが出演していたことで知られるライヴハウス、UZUは、東福生駅の近くで、静かにその存在感を打ち出していた。大きさはよくある、街のライヴハウスといった感じだが、やはり店の構えは、どの街のライヴハウスとも似ていない、独特のものだった。

比嘉とその部下たちに拉致されたユキらが、歩道橋の上から貨物列車に飛び乗ったのは、この無人駅、東福生である。 「この高さなら列車の屋根に飛べるかな」と思ったが、もちろん飛ぶのはやめた。

日中はいまだ、日差しが痛くかなり暑いが、陽が暮れると涼しい風が吹き、秋の虫が鳴いているのが聴こえる。そんな中、福生を覆う、アメリカの空気を吸っていたら、頭の中にニール・ヤングの歌声が流れて止まらなくなってしまった。だが、お前さん、ニール・ヤングはアメリカの人じゃなくてカナダの人だぜ。流れる歌が『アラバマ』だからいいか…でも、『アラバマ』は南部の人種差別批判がテーマとか、そんな感じであまり暢気な歌ではないか…

横須賀と福生、ユキらの影を感じることは出来たが本人たちを見つけることが出来なかった。そうすると、次は沖縄か。沖縄には、いつか行くことが出来るのだろうか。

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(2004/11/05)

上條 淳士

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