ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

惑星コバイア

AKB48 / 神曲たち (2010)

前に書いたとおり、シングル『RIVER』に超感動したので、アルバムも聴いてみたヨ!

やはり方向性としては、結局先に聴いてしまったメッセージソング調の『RIVER』が一番良かったかなあ。そして、アルバムの中にそうそう同じタイプの曲ばかり並んでいるワケがないのである。 泣きのコード進行と勇ましい言葉で攻めてくる曲はこれのみであった。

自分の好み、趣向としてはそういうことになるのだが、他に収録されているどの曲もよく出来ている。おニャン子クラブから約四半世紀の年月が経っているが、もう50歳を超えている秋元康が、ちゃんと青春の風景を切り取ってパッケージしているというのは凄い。ストーンズは還暦過ぎて『サティスファクション』を歌っているのも凄いが、50代半ばの秋元康が、“全力で走って大声で大好きだと叫ぶとかそういう歌”を作っているのも凄い。

歌詞に関して、一人称が“僕”で“君”に語りかけている男目線の歌がけっこう多いことに気付いた。おニャン子のときはどうだったかな?とか、現在、同時代に活躍する他の女性アイドルはどうなのか?とか、比較対照が手元にないのだが、そのデータを調べるのはメンドクサイからやめた。

ちなみにこのアルバムの中に、男目線で歌っている歌は、恋愛がテーマでないものも含めて全16曲中12曲もあった。この手法自体は古くから使われているモノなので今さら騒ぐことではないが、やっぱ多いな。すると、これはどういうこと?

“女性イドルが女の子言葉で歌う”のは、男性リスナーが「女の子がこんなことを思っていたらいいな~」という願望を映し出していて、逆に“女性アイドルが男の子目線で歌う”のは、もっとダイレクトに男性リスナーの願望を女性アイドルが代弁してくれている。男言葉なので共感、シンクロしやすいということ?(もちろんAKBには女性ファンも多数いるだろうが、あくまでメイン・ターゲットとしての例え話ね)

曲に関しては、それぞれの骨の部分はやっぱ良いのだが、上モノが派手な曲、とくに4つ打ち系の曲に乗っているビカビカ感はちょっと辛かったかな。なんかせき立てられているようで。あと、アイドルの曲では昔から、サビ前で一度落としておこうってときにBメロのリズムが「ドン、ドドン♪ドン、ドドン♪」てなるのがよくあるじゃん。このアルバムを聴くとあれの上に「チキチキ…」と16の刻みが乗っていたり、同じ拍の中にキックが「ドン、ドドン♪ドッドッドドドッ!」って詰め込まれていたりするのでタイヘン忙しいのだ。まあ、それは曲自体の問題じゃなくて世代、年齢的ギャップのようなもので、2010年のリアルとしてはOKなのだろう。なので俺としては、ゆったりとしたテンポの曲がたまに出てくるとちょっとホっとする感じ。

で、今回の一連の流れを総括しますと、たまたまラジオで『RIVER』を聴いて感動した自分に感動したね!まだ、音楽で心が動くことがあるんだと。どのくらい動いたかというと、聴いた後にネットでクリック、クリックしてこの曲は何なのかと調べたり、TSUTAYAで“CDレンタル5枚で1.000円”の中にこのアルバムを1枚紛れ込ませて借りるぐらい心が動いた。

年々音楽ソフトを購入する頻度は減ってきた。「いや!俺は同年代の中ではまだ、断然多く音楽を聴いている!」と思っても、それの多くは“発掘音源”とか“未発表ライヴ”とか、“リマスターで音質向上”とかだったりしない?俺はそうだったりするんだけど、聴きたい音楽が減ってくるとき「最近の音楽はつまらない」という物言いの、大方は錯覚なのだ。

この議論を普遍化すると顰蹙をかいそうなのであくまで自分のことを言うと、年齢とともに感性は鈍ってくる。いつしか“感動”ではなく“知識”“情報”として音楽を無理矢理仕入れていた感もある。

(ライヴに行って生で聴く、観ることに関しては話が違ってくるが、長くなるので今回は触れない)

なので、たまたまラジオで聴いた曲に、予備知識もなく無条件に感動したので、「まだ、俺も脳内のHDDに少しは空き容量があるんだなあ」と、思いましたとさ。めでたしめでたし。

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(2010/04/07)

AKB48

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