『3055』が閉鎖しちゃったので、書いた記事をサルベージするよ。
入稿 2012/04/30
Mott The Hoople / All The Young Dudes (1972)
1. Sweet Jane
2. Momma's Little Jewel
3. All The Young Dudes
4. Sucker
5. Jerkin' Crocus
6. One Of The Boys
7. Soft Ground
8. Ready For Love/After Lights; Ready For Love\ After Lights
9. Sea Diver
そのワイルドなパフォーマンスで、ライヴは好評を得ていたモット・ザ・フープルだが、レコードのセールスは振るわず、解散を決意。しかし彼らのファンだったデヴィッド・ボウイがアルバムのプロデュースを買って出て、表題曲『All The Young Dudes』を提供。起死回生の転機が訪れ、その後この曲はモット・ザ・フープルの代表曲としてだけでなく、グラム・ロックのアンセムとして広く聴かれるようになった。この経緯はクラシック・ロックを語る上で重要かつ有名なエピソードである。
曲を書き下ろしたデヴィッド・ボウイ本人もライヴで取り上げ、後にベスト盤でスタジオ・テイクも披露しているので、モットのヴァージョンと聴き比べてみると面白い。ボウイ・ヴァージョンの方は彼らしく、退廃的かつ文学的な響きを持っている。しかし、この曲を名曲たらしめる、決定的なマジックをかけているのは、やはりモットのヴォーカル、イアン・ハンターの歌声だろう。
イアン・ハンターは、歌が超絶的に上手いといったタイプのシンガーではないと思う。だが、彼が歌うこの曲は、若者の不安や希望、苛立ちと力強さといった、相反するものが詰まった青春の不安定さが見事に表現されている。そして更に、発表後何十年と経った今では、山あり谷ありだったモットのヒストリーともだぶって、男の哀愁、転がるロックンロール・バンドの切なさなども感じてしまう。
そんなことも踏まえ、この曲に一番似合うシンガーは、他の誰でもなく、ボウイも魅了されたイアン・ハンターなのだと感じるのである。(Jeff Goldsmith)