ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

世界で一番 孤独なLover

ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987@ イオンシネマ春日部

 

ビートチャイルドの続きね。

HOUND DOG ビートチャイルドの映像記録に難点があるとすれば、カメラワークが80年代的ってこと。ほとんどヴォーカルしか追ってないんだ。レッズのときもギターソロの最中、ずっとユカイしか映ってなかったり。となると、HOUND DOGの場合、大友康平のすぐ後ろにいてマイクのカラミもある鮫ちゃんが大活躍で。ベースを投げては捕り、ネックから手を放しては拳を突き上げ、二人のギタリストより目立ってた。何時間も強い雨に打たれ続けたオーディエンスに、アドレナリン分泌を促す成分が高いと思われる『ff (フォルティシモ) 』のイントロ、あのキーボードのリフレインはどのくらい効いたのだろう?

BOØWY BOØWYはこの年のクリスマスに解散宣言をしている。9月にラスト・アルバム『PSYCHOPATH』が出るから、もうそれも完成してるって時期か。映画では比較的コンディションまともな曲が使われているけど、雨で電気系統やられて布袋のギター・サウンドがかなりグズグズになるんだよね。白井貴子がもがいてもがいて豪雨のステージを乗り切ったのに対し、ヒムロックはギターの音が潰れようがどうしようが、1ミリもそのカッコつけを崩さないという。ギターアンプからはちゃんと、いつものようにエフェクターが効いた音が出ているものとしてステップを踏んで、胸に手を当てて歌うっていう。もう美学の塊。トップを捕ってもうすぐ最終コーナーを曲がろうとしているバンドが大雨でオロオロはしてらんないか。とにかくトラブルがあっても、なにひとつ揺らいでなかった。

THE STREET SLIDERS HARRYも蘭丸も立てた髪がペッタンコで、JAMESのリーゼントもシナシナだけどお構いなしのロックンロール。ZUZUは帽子だからまあ大丈夫か。蘭丸のコーラスがいつもよりヤケクソ気味だったのかな?キレてる感じでよかった。スライダーズで80年代の映像って、歌ってる以外のオフショットはほとんどダンマリなのしか見たことないけど、出番を待っているときに他のアーティストの状況を知って、「自分らのアンプもダメなんじゃないか」みたいな会話をしてた。

尾崎豊 尾崎の場面で、7人しかいないシアターなのに俺のすぐ後ろの席でなんかポリポリ食い始めてるヤツがいたんだよ。さっきまで誰もいなかったのに。「何だようるさいな。映画に集中できないじゃんか!」と思ったら、それは何かを食う音じゃなくて、尾崎のマイクに当たる雨粒の音だった!『シェリー』はアコースティック一本の弾き語りだからバンド演奏のときより雨音がリアルに聞こえるんだよ。それが壁のスピーカーから出てきてたんだった。尾崎のライヴパフォーマンスって、振り絞って振り絞って、命を削ってるみたいなテンションじゃん。それと大雨が合わさるともう大変なことになってたね。

渡辺美里 尾崎から渡辺美里っていえば、学生コンサートの件で電話したら主催者の父ちゃんに電話口で怒られたって話を思い出さざるを得ないが、まあいいか。感電の危険を顧みず裸足でのステージ。渡辺美里は、後に西武球場のライヴが雷雨で途中打ち切りってときがあったんだよな。ビートチャイルドでは見事に歌い切って夜明け前の会場をゴールまで繋ぎとめていた。過酷な状況で様々な客層がいる中、ヒットシングルって重要だなと、その磁場ってあるよねやっぱし。

 

佐野元春 with THE HEARTLAND 映画オープニングのリハ風景から、佐野元春のステージになんか見たことあるやつがいるなーと思ったら、辻仁成オイっ!!ゲストで合いの手コーラス入れてたよ。大トリで出てきて、すべての混乱を回収するって意気込みで歌う佐野元春の歌には鬼気迫るものがあった。楽屋の通路で、出番を終えた渡辺美里に労いの言葉をかけるシーンは大人のアーティストって感じが出ていて流石だなと感じた。夜明けとともに雨も上がって、そんな『SOMEDAY』は感動的だった。アリーナ、スタジアムクラスの動員を誇るアーティストが多数出演するビートチャイルドで、トリが佐野元春ってのはベストな人選だったと思う。

 

7万2千人も集まっちゃって、もう中止にも出来ないからやり通しちゃったってことで、ポスターのキャプションにもあるように最低と言えば最低のイベントだけど、トラブルを抱えながらも各出捐者のパフォーマンスは最高だった。HOUND DOG、尾崎、渡辺美里あたりは俺のメンタリティからすると遠い位置にあるロックなんだよ。でもそれはそれこれはこれで、どのアーティストも全員素晴らしかったし目が離せなかった。同じ時代の空気として、こっちもあればあっちもある、どのロックもこのロックも含めて良い追体験が出来た。そんな160分間だったね。

BEAT EMOTIONBEAT EMOTION

(2012/12/24)

BOΦWY

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