プレカリアート問題の論客、雨宮処凛氏のバンギャル小説。この人の自伝はすでに読んでいて、自身のバンギャル時代にも言及していたので、それを踏まえて物語を追った。自分の経験を下敷きに書いたというか、個々のエピソードもけっこう実際にあった話なんじゃないかな。と、思えてしまうのは、文体がまるで本当に女子中高生がさっき見聞き、体験し感じたことをそのまま吐き出しているような感じなんだよね。
作者自身がかなり投影されていると思われる主人公のえりは、自分のことを馬鹿にしたりカツアゲしたりするクラスメイトとか、勉強勉強とうるさい母親とかとかとかとかとかとにかくいろいろ諸々で自分の居場所がなくて、そんでもってある日観たロック・イベントのTV放送をきっかけにヴィジュアル系バンドにどっぷりハマって、おっかけになる。 って話。
でもまあバンギャルになったらなったでそこにも嫉妬やら優越感やらすれ違いやら誤解、相思相愛と思っていたバンドマンとも関係も実はそうでなかったり、ままならなくて。世間の偏見を覆すためにコスプレチームと一緒にゴミ拾いをしたかと思えば、スーパーで万引きをして捕まってたり。理屈がいろいろ破綻してるんだけど…当たり前か十代なんだから。そしてその年頃の、わけの分からない内面から噴出す爆発と、そこから発生する驚異的なバイタリティには頭が下がる。そこらへんの、青春の衝動はよく描かれていると思う。
つうかこれ、この一冊で完結しないんだよ。どうしよう…また105円コーナーで見つけたら買おう。
バンギャル ア ゴーゴー(1) (講談社文庫)
(2009/08/12) 雨宮 処凛 |