ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

プリプリSUMMERキッス

カンサス / 暗黒への曳航 (1977)

Kansas / Point Of Know Return

 

今までにも、何度か小出しに語ってきましたけれども、僕は(今回は“僕”でいくぜオイ!)、1990年代の半ばから十何年間、CD屋で働いていたんです。ふたつの会社で働いて、最初に務めた会社には三年半ほどいました。新しい店の、開店準備期間を含むオープニングから、会社自体が潰れてしまうまで働いていたのです。

僕は、メタル・フロアに配属されました。“ヘヴィ・メタル”のコーナーですね。メタルフロアの担当ではありますが、僕も含めて当時、メタルメタメタメタル然とした、ガチメタルを好んで聴いているスタッフはほとんどしませんでした。働いている間、スタッフが辞めたり新しい人が入ったりと入れ替わりはありますが、初期のメンバーは、グランジ/オルタナティヴが好きな人と、パンク・バンドを組んでいる女の子と、スラッシュ・メタルとファンキーなミクスチャー・ロックが好きな人、そしてロックンロールとかグラム・ロックが好きな僕といった感じの集まりでした。あ、ひとりハーレム・スキャーレムとか、メロディアスなメタル好きがいたな。

ほぼ全員がそのとき、主としてメタルを聴いてはいないんだけど、まあ元を辿れば中高生のときにメタルを聴いていたとか、そんなところかな。もちろん僕も含めてね。

ある朝、営業開始前、レジ金の準備も店内の掃除も済んで開店待ちの間に、グランジ好きなケンゴくんと、スラッシュ好きなチヒロ君が、「何何?何の曲だよ?」「ほらアレだよアレ!だからアレだってば!」みたいな会話を交わしているのが聞こえてきました。何きっかけで、どんな経緯を辿って、その会話なのかまったく覚えていませんが(覚えてないんかよ!そこが重要な気もするが)、とにかくそのような会話があったのです。

そして、チヒロ君は、一枚のCDをプレーヤーにセットし、選曲ボタンを押してCDを再生しました。店の天井から釣ってあるBOSEのスピーカーから、アコースティック・ギターアルペジオ、続いて「ァィ クロ~ マァ~ ア~ィズ♪」と、歌が聴こえました。チヒロ君は、カンサスの『すべては風の中に(Dust  In The Wind)』をかけたのです。

「古いロックとかが好きです!」とかいいながら、当時の僕は、カンサスをちゃんと聴いたことがありませんでした。カンサスというバンドの存在はなんとなく知っていて、『すべては風の中に』のメロディに聞き覚えがあっても、「このバンドのヒット曲がこれ」といった具合に一致していなかったのです。それがこのとき、「この曲がアレなのか!」と、点と点が線で結ばれたのです。

そこにいた二人の会話、その詳細は覚えていませんが、曲が流れたとたん、僕の中で『すべては風の中に』はカンサスの曲になり、そして、曲を聴いたケンゴ君は「あ、これね!ハイ、ハイハイ!」と、声には出さず、それを口パクのジェスチャーで「(ハイ、ハイハイ!)」と大きく頷きながら喜びを表現し、チヒロ君とハイタッチを交わしたこと。そして、長短調を行ったり来たりするような、独特の空気感の中でで爪弾かれるギターのアルペジオに乗って、売り場の中に、乾いた風がサッと吹いたことは、15年以上経った今も、はっきりと覚えています。

Point of Know ReturnPoint of Know Return

(2002/02/13)

Kansas

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