ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ロードハウス・ブルース

青春18きっぷの利用期限最終日である。全5回のうち、1回は熱海行き、3回を京都金沢の旅に使ったので残り1回分。それを使って銚子、犬吠崎まで行ってきたのである。

総武本線を使って銚子まで行き、銚子電鉄ぶらり途中下車の旅である。

青春18きっぷを使うからして、JR、とくに総武本線は一番長い乗車時間となったが、その車窓についてあまり語ることがなかったりする。途中までは普通に通勤電車といった装いだし、始発で地元を出発したので、眠くて眠くて総武本線の道中は爆睡していた。

揺れに身を任せながら大口を開けたアホ面を晒し、眠っていた私が目を覚ますと、列車は成東の駅に到着するところだった。ここで車内は一気に空いて、乗っているのはほとんど、沿線の学校に通う高校生となる。そして、成東駅で乗ってきた一人の男子高校生に、私の眼は釘付けになった。彼は短ランとボンタンという、BE-BOP的なファッションでキメていたのである。リーゼントやパンチパーマでこそなかったが、トオルやヒロシが着ているような制服が眩しかった。

その彼が八日市場駅で降りる際、入れ替わりに、友人らしき頭髪を茶色く脱色したもう一人の男子高校生が乗ってきた。彼らは挨拶を交わし、降りるかれが乗ってくる彼に何やら尋ねると、乗ってくる彼は言った。

「うん、もう帰る」

そう、今はまだ朝であす。事情はよく分からないが、彼らは正しい不良ライフを送っているようだった。

そんな、ちょっとしたエピソードを盛り込みつつ、総武本線の終点である銚子駅に着いた私は、ミニチュアみたいな乗換え口を抜けて、JRから銚子電鉄に乗り換える。

 

私が乗車したのは、鮮やかなブルーに、イラストが描かれた車両。車内で、車掌より1日乗車券を進められ、購入する。

まずは終点の外川駅まで行ってしまう。ここまではネットで検索した時刻通りに列車を乗り継いできたが、これより先のことは、後で考えることにした。JRで銚子駅から出発する帰りの時刻だけ合っていればいい。銚子電鉄で外川まで乗っていた乗客は、私と、小さな子供を連れた母親だけだった。

外川駅には、自由帳的なノートが置いてあり、訪れた皆が、それぞれ銚子電鉄への想いを書いていた。

 

外川駅からそのまま、走ってきた線路の延長線上にある坂道を下ると、民家の間に海が見えてくる。「坂道を下ると」っつうのがいいよね。

坂道を下りきると、漁港に出る。月曜の朝、観光客はいない。漁業関係者が道具の手入れをしているのと、散歩中の住民が数名いるだけで、とても静かだ。防波堤に囲まれておるので波の音も遠く、聴こえるのは海鳥の鳴き声くらい。

 

おばさんは、反りの姿勢で朝日を浴びていた。一仕事終えたところだろうか?これから仕事を開始する準備運動だろうか?

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猫的な生物を追って歩いていくと、小さな神社があった。大杉神社である。賽銭を投げて、手を合わせた。

犬吠崎に行くことは当初より決めていたが、せっかくフリーパスを購入したので犬吠の隣、外川から二駅戻って君ヶ浜へ。

 

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駅前に!!

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駅からしばし歩き海岸に出ると、犬吠崎の灯台が見えた。そんなに距離はなさそうなので、歩いて行くことに。

浜辺の休憩所では、老人達が憩っていた。

その休憩所の横に…

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はじめは海岸から一歩入った散策路を歩いていたが、途中で「なんで海まで来て防風林の中を歩かなきゃいけないんだ?」と思い、海沿いの国道に出て灯台の方へと向かう。

灯台に到着。周囲をウロウロする。月曜日なので観光客は少なく、連なっている食事処や土産物屋はほとんど閉まっていた。イカ焼きなどを売っているテイクアウトの店先では、スピーカーから演歌が流れていた。

“犬吠崎マリンパーク”で食事をとり、土産物を買うことに。

マリンパークの2階に上がり、日替わりの『海鮮丼ランチ』を喰らう。価格999円と、他の店よりも、そして同じ店のメニューの中でも一番安い。そして、『あら汁』がおかわり自由。このあら汁が美味くて、何度もおかわりしていたら、店の爺さんに「旅の人、あら汁美味いじゃろう。七味と天カスがそこにあるから入れるがよい。いっそうコクが出ることじゃろう」と言われてしまった。私は「はい、とても美味しゅうございます」と、卑しさを見透かされた照れの混じる愛想笑いで答えた。

会話の概要は本当だが、言葉のニュアンスはフィクションである。

食後、海をしばし眺め、自分の内面と向き合う。と、見せかけておいてホントは何も考えていないでボーっとする。そして私は犬吠の駅まで歩いた。今日は関東全域がそこそこ暖かいのか、千葉の南にいるからなのか、日差しの中にいると寒さは感じない。寒風にさらされると思い、使い捨てカイロを持参したが使わなかった。

フリーきっぷには、周辺の施設で使える割引券が付いており、私は犬吠駅で『ぬれ煎餅』が1枚もらえる券を使った。券を出して、「ぬれ煎餅1枚タダでよこせや」というのもなんなので(つうか、それって出来るのかね?何も買わないで煎餅もらうだけっつうのは)、醤油の小瓶をお土産として購入した。

犬吠駅からまた電車に乗り、ずずいと進んで観音駅。そこから銚子漁港まで歩いてみよう。

 

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!!!?

 

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猫的な生物たちの前に佇んで老婆と話し込んでいた爺さんは、カメラを構える私に話しかけてきた。

「旅の人、こいつらは、飼い猫ではないのじゃよ」

私は、「(新鮮な魚を毎日、こんなに沢山食っていたら)舌が肥えちゃいますね」と、曖昧な笑顔を作って答えた。

会話の概要は本当だが、言葉のニュアンスはフィクションである。そして、互いの話がイマイチ噛みあっていない気がする。

駅から銚子漁港へと出る前に位置する円福寺は立派な造りで、五重塔と観音様があった。

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銚子漁港には沢山の船が並び、潮と魚の匂いが充満していた。通りを挟んで鮮魚を売りにした小売や食事処が多数。「あーここで昼飯でもよかったなあ」と思う。次回はそうしてみよう。今回はあら汁美味かったし。

いたるところで、捕虜となった宇宙人たちが日干しにされていた。

おっと、港の雰囲気に浸っていたら、帰りの予定時刻が近づいてしまった。急いで駅まで戻る途中、トイレに行きたくなってコンビニに駆け込んだり、漁港から駅までの道は方角が分っているので簡単と思っていたら、線路沿いの住宅街で袋小路に入ってしまったりと、結構焦りながら観音駅に到着。銚子電鉄で銚子まで、そして銚子から、行きは総武本線だったが帰りは成田線で千葉まで出る。

停車している成田線の車両に乗り込むと、そこにはガッチガチのトゲトゲ、鋲ジャン上等の全身レザー・ファッションに身を包んだ、正しい姿のパンクスが、「Tシャツに短パンのカジュアル・パンクども、何するものぞ」とシートに腰かけていた。客数もまばらなその車両で、私は思わずパンクスが座っているシートに、2人分ほど距離を開けて位置取った。

朝は短ラン、ボンタンの高校生に出会い、帰りは革ジャンのパンクスと同じ電車で帰るという旅で、今シーズンの青春18きっぷは終了したのであった…

って、視点はそれで合ってる?

銚子電気鉄道〈上〉 (RM LIBRARY 142)銚子電気鉄道〈上〉 (RM LIBRARY 142)

(2011/05/01)

白土 貞夫

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