ザ・サンシャイン・アンダーグラウンド - ジェフ・ゴールドスミス日記

『コオナゴ入りおろしポン酢オムレツ』

＜材料＞

＜作り方＞

目の前が明るくなった。産道を抜けて、私はこの世に生を受けたようだ。母親の胎内で何ヶ月か待っていた。暗い中でじっと待っていた。今、解き放たれたのだ、私は。何ヶ月も待っていたので、だいたいの事情は分った。

母親の手を握っているのは父親だ。今、まだ私は視力も聴力もおぼつかないが、感覚で分かる。父親は出産の瞬間に立ち会ったようだ。そして今、なにやら労いの言葉を、母親にかけている。

産婦人科医と、数人の看護士の動きも感じる。何人いるのだろう。

そうだ、産声を上げなくては。とりあえず泣かなくては。と、私は思い出した。悲しくて、苦しくて泣くのではない。これがないとどうも始まらないらしい。なにより、呼吸が始まらない。危険だ。

ずっと母親の胎内でイメージトレーニングを行っていたが、いざとなると緊張してなかなか泣けない。落ち着け、落ち着け…そう自分に言い聞かせて、私は一瞬の沈黙があった後、思い切り泣き始めた。

私が無事に泣き始めたのと、目視による確認でとりあえずは諸々異常がないらしいと分ったので、分娩室は祝福の空気に包まれたようだ。

そして、私は母親に抱かれた。偉大なる対面を遂げたのだ。父親は涙ぐんでいるようだ。

そして、私を優しく抱いて母親はこう言った。

「息子よ、世界へようこそ。この世界には絶対的な正義など存在せず、それぞれの立場や都合の間で綱引きが繰り広げられているだけなのだ」

…と。

できあがり！！

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