小沢健二 / 犬は吠えるがキャラバンは進む (1993)
まず、最初にはっきりと、白状しなければならないのは、私は次作にあたるアルバム『LIFE』の方を先に聴いているので、時系列的に逆に体験しているのだ。
つうか、どっちの作品もちゃんと聴いたのは最近になってからなんだヨヨヨよいっ!!バキーーーン!!
…なので、『LIFE』を先に聴いてこのアルバムを聴くと、『LIFE』が発するキャッチーさ、祝祭のような眩しさと比べて、メロディもアレンジも、なんともシンプルというかストイックというか無愛想というか。ヴォーカルもなんだか一枚幕がかかったようで…否、ヴォーカル・スタイル自体は変っていなくてメロディとの兼ね合いかな?とにかく、未完成、試作品的なものに感じたのであった。
私がポップスに求めているカタルシスのようなものが湧いてこないのである。
しかし、「何だろう?何だろう?この感じは何だろう?」と思っているうちに何度もリピートしてしまったのである。そうして聴いているうちに、突然バキーーン!!とアルバムの魅力が分かるということもなく、また 「何だろう?何だろう?この感じは何だろう?」と聴いてしまう。
で、思ったのだが、大ヒットした『LIFE』や、その周辺のシングル曲、当時の露出の印象が強いからこのアルバムに違和感を感じたのであって、これはどうやら『LIFE』のプロトタイプではなく、まったく違った方向性のアルバムのようである。そう考えると、この作品の魅力もちょっと分かってきた気がする。
つうかさあ…よく考えたらオザケンのアルバムって、ジャズとか全インストとか、どれもまったく方向性が違うのな!
私の手元に雑誌『レコード・コレクターズ』の1994年4月号がある。
この号の巻頭特集は『ザ・バンドとウッドストック伝説』。“ウッドストック”といっても、ヤスガー農場で開催された“ウッドストック・フェスティヴァル”じゃなくて、ボブ・ディランとザ・バンドとか、ジョン・セバスチャンとか、ボビー・チャールズとか、ウッドストック周辺のフォークとかルーツ・ロック的な感じのね。その特集の中で、オザケンと小倉エージ氏がそこら辺の音楽について対談しているのだ。
それを踏まえて聴くと、そんな感じの要素がそこかしこに散りばめられているような。それも「洋楽志向!」って感じではなくて、「ジャパニーズ・ポップス!」って顔してさりげなく配置されてるのがイイ。…と、思うけど、間違ってたらすまん。
そんなこんなで、ファースト・コンタクトはなんか肩透かしな感じで戸惑うけど、ついつい何度も聴き返してしまう渋い力を持ったアルバムであった。マル。
![]() | 犬は吠えるがキャラバンは進む
(1993/09/29) |
![]() | dogs
(1997/07/24) |