ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

キリング・フォー・ア・リヴィング

世界糖尿病デー記念『そのとき!!…何が起こったか』

に続いて、今日は第4回目だ。

入院当初の重篤な状態からは脱したので、2日目か3日目には、俺は入院当初に入った2人部屋から4人部屋へと移された。まだ足元がおぼつかないので、寝たままベッドごとガラガラと転がされていったのだった。俺のベッドは4人部屋の廊下側になった。カーテンで仕切られているのでほとんど顔を合わさないが、隣は若そうなやつで、俺の足が向く方には年配男性が2人いるという配置の部屋だった。

隣にいる若やつの会話をカーテン越しに聞いていると、どうも彼はカクカクシカジカな病気で入院中。身体に薬を投与するパイプを入れているらしいが、体調自体はピンピンしている感じだったで、けっこう頻繁に外出手続きを行って外に出ていた。ときおりガラの悪そうな友達が何度も3~4人ぐらいで見舞いに来てずっと話し込んでいたり、派手な奥さんと子供が来たりしていた。あるときは、酔っ払ったパンチパーマのあんちゃんが面会時間に来て…(カーテン越しだけど空気でパンチだって分かったね。そしたらホントにそうだったよ)酒が回って鼻の詰まった息の荒い声で「フグゥ~あどさ~、ンフゥ~あんどきざ~、ぞんでざぁ~」みたいな会話を聞いてるのは辛かったなあ。カーテン越しで姿が見えない会話を聞いているのは物凄く気になって辛いのだった。

そしてさらに…やつはとくに食事の制限はないらしく、きっかりくっきり三度の食事しか摂れない俺の横で好き放題菓子を、お菓子を食っていたのだ!

カーテン越しに聞こえる、菓子のパッケージを開ける音。菓子を咀嚼する音…

「サクサク…」という音とともに甘い匂いが香ってくれば「うぅ…今こいつは甘いラスク、甘くて美味しいラスクかバタークッキーを食っている!」と想像し(実際は知らんけど)、音の感触が変われば「あ!今度は″きのこの山”だ!きのこの山を食っている!」と考え、しょっぱい匂いが部屋に充満すれば、「うわ!ポテトチップスを食っている!″チップスター”か?コイケヤの″のり塩味”だったら絶対殺す!」とか思って俺は悶えていた。そしてトドメに、「グビッ…グビ…」と、何かの飲料で菓子を流し込む音…

病院を舞台にしたドラマで、よく大部屋の入院患者同士が仲良く会話したり情報交換している描写があるが、俺はそんなことはしなかった。隣のやつとは互いにカーテン越しの気配は感じているが、ほとんど顔を合わせないまま何日も過ぎ、となりのベッドからどうも退院の日程やら手続きの確認をしている風の会話が聞こえてくるようになった。

そして、ある日の朝、食事後の歯磨きをしようとしたときに洗面所でやつと出くわしてしまった。そのとき、俺は日ごろのイラつきを抑えきれず反射的に逆上し、やつに言ってやった!

「あ、おはようございます。もうすぐ退院?」

やつは答えた「はい、そうっす。(あなたも)もうすぐですか?」

「いや、まだ何も言われてなくて…ぁははは…」と、俺も答えた。

清清しい、気持ちの良い風が吹いていた。

ワケないだろが。

―まだ…まだつづく―

 

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