ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

デッド・フラワーズ

私は陽も暮れてしばらく経ち、人気の無くなった商店街にいた。

今年の夏はまさに酷暑といえる暑さで、8月も末になり、さらにその夜になっても気温が高い。例年だと「暑い暑い」といってもお盆を過ぎるとしだいに朝晩から空気が変わっていき、過ごしやすくなるのだが今年はこの時点でそんな気配を感じない。こうして夜になってから外を歩いていても汗が噴き出してくる。

どうもスネのあたりを何箇所か蚊に刺されたようで、段々と痒くなってきた。

もう帰ろうといくつか歩を進めたところで、不意に耳元で蚊の羽音が聞こえた。私は驚いて、反射的に音の聞こえる方に手を出した。

すると、とっさのことで力の加減がわからなかったのか、私は自分の頬の辺りを、思いのほか強くビンタしてしまった。

手はメガネの柄に当たり、かけていたメガネは飛んでしまった。そして、アスファルトの上に落下した。しかも、悪いことにレンズの部分を下にして道上に立ってしまっているではないか。

私はすぐさまそれを拾い上げ、レンズにキズが付いていないか確認した。

細かい砂のようなものがレンズの表面に付着しているが、大きな傷は付いていないようだ。

ひとまず胸をなでおろしたが、明るいところで確認しなくてはと、もうあとわずかとなった自宅への帰り道を急いだ。

帰宅しすぐさま洗面所の灯かりをつけ、メガネに付いた砂を水道水で洗い流し、蛍光灯の灯かりにレンズをかざしてみると…

あった…キズが。

左右のレンズに一箇ずつ、フチの部分に目立つ傷が付いている。

「やはりあったか…」と、私は己の呪われた運命に絶望した。

約2年前にも、不用意に落としてしまい、レンズに傷をつけ交換するハメになってしまった。しかも私のレンズは度に加えてプリズムが入っているので、レンズのみ交換でも高くつくのだ。

ためしにかけてみると、キズは視界の外にある。鏡に映る自分の顔を見てみると、メガネについた傷はどうだとばかりに自らの存在感を示しているが、こちらから外の世界を見る分には、とりあえず支障はないようだ。

私は、もう少しお金に余裕ができるまで、レンズ交換なりメガネの買い替えなりの行為は保留することにした。

「今はまだ、このままでいよう…そして、しばらくしたら買い換えよう…メガネを…買い換えよう」

私は、いまだ続くの夜の暑さと、まとわりつくような湿度を身体に感じながら、涙をこらえ強く唇を噛んだ。

…つうかこんな文字数使って書くことじゃないな。

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