ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

大井追っかけ音次郎

TILT / DEAR ROCK' N ROLL PARTY 50's - 60's (1989)

日本のメタル・インディーズ・シーンの中にあってライヴ本数の多さと、そのハードなツアーで培ったライヴ・パフォーマンスが魅力だった、ティルトのメジャー2ndアルバムは、50年代~50年代のロックンロールを取り上げたカヴァー作品だった。

ストーンズを2曲取り上げているが、『のっぽのサリー(Long Tall Sarry)』や『ダンス天国 (Land Of 1,000 Dances)』など、全体的にはオールディーズのカヴァーといった佇まい。

往年の名曲たちをカヴァーするにあたって、大枠のアレンジは原曲のイメージを踏襲しつつ、ティルト流にエッジの立ったサウンドに・・・なっているのだが、ギターのエッジが立ちすぎてギャンギャン、ガチャガチャとうるさい印象がしないでもない。

メタルだからエッジが立ってラウドなのはおかしくないのだが、このカヴァー・アルバムに関しては曲とサウンドがミスマッチ。

インディーズ時代の『The Beast In Your Bed』はもう少しマイルドな歪みで太い音の印象だったし、それに近い音でカヴァーした方が良かったような。

そのまま英詩でカヴァーしているのに混じって『ロコモーション(Loco-Motion)』などは「誰でも一度で好きにな~るぅ~♪」といった日本語詩を乗せていて、その割り切りぶりは面白い。

で・・・問題なのは、メジャー・デビューしてフル・サイズのアルバム、2枚目を出すタイミングでそれがカヴァー・アルバムになるということ。

表向きは「ロックンロール・バンドとしてルーツを再確認する」といったところだと思うが、何故2ndアルバムで・・・という疑問が残る。

バンドからの提案なのかレコード会社主導での企画なのか分からないが、メジャーに行って曲のストックが尽きたからカヴァーなのかとか・・・インディーズでかなりのパフォーマンスを発揮していたバンドでもメジャー・デビュー後早くに失速してしまうのは、インディーズ時代に溜めた曲のストックがなくなってしまうのと、ビジネスライクに決まってゆくリリースのスケジュールと折り合いがつかなくなったりといった感じの事情が原因の多くを占める気がするが、ティルトの場合はどうだったのだろう?

デビュー・アルバムでロケット・スタートして2ndアルバムでさらに攻勢をかけるというのが理想の形だと思うが、「このタイミングで何故カヴァー・アルバム?当時の責任者出てきなさい!」・・・といった思いはある。

スピード・メタルの暴力性からバラードの泣き、T-Rexのカヴァーを入れてロックンロールの楽しさまでつぎ込みバレエティに富んだライヴでXが他を圧倒するまでは、ティルトのライヴは観客をアっと言わせる演出の連続でインディーズ・シーンの中でも群を抜いていたのだ。

“HEAVY METAL DAY'S Vol.6 ”にトップバッターで出たときなんか最高だったよ。