ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

最後のシャワーに花束

狂気~ピンク・フロイド・シンフォニック

Us And Them: Symphonic Pink Floyd

キリング・ジョークのメンバー がプロデュース、ロンドン・フィル・ハーモニック・オーケストラの演奏による、クラシック調にアレンジされたピンク・フロイド・ナンバーが聴ける。原題に『Us And Them』とあるが、オーケストラの演奏によるアルバム『狂気』の完全再現ではなくて、『狂気』の中から6曲、『ザ・ウォール』から3曲といった選曲。

あの、ピンク・フロイド・サウンドがクラシックになったらもう、どれだけのめくるめく世界が・・・と期待して聴くと若干肩透かしを喰らったりする。食い合わせが良いようでなかなか難しい。ピンク・フロイドの音楽は思わせぶりで長いイントロや様々なエフェクト、ギミック的なSEを取り払えば意外とシンプルなブルース・ロック的な音楽だったりするのだ・・・というのはかなり乱暴な話だが、話を分かりやすくするためにこの際多少のことには目をつぶろうぜ!

(『原子心母(Atom Heart Mother))』は大胆にオーケストラが導入されているのだが、それは製作過程でその着地点に向かって作られているのでまったく別の話になる)

そう、ホネの部分がシンプルなのでクラシック・アレンジを施すのはけっこう難しい(と思う)。デヴィッド・ギルモアのギターとリック・ライトのキーボードで行われる空間演出はオーケストラの生楽器に置き換えるのが困難なのだ。まあ、それはそれでと割り切って考えれば興味深い解釈がなされており楽しめる作品ではある。

Disc1最後の『タイム(Time)』と、Disc2『虚空のスキャット(The Great Gig In The Sky)』、『マネー(Money)』はオーケストラの演奏ではなくリミックス・ヴァージョンが入っていて、オマケ的ではあるがこれがなかなか侮れない感じで、オーケストラで再現するのピンク・フロイド楽曲群はドラマチックな部分が前に出てサウンド・スケープ的なところが後退しているが、リミックスの方は泣きの部分が排除され、その分ピンク・フロイド・サウンドにとって重要な要素である“トリップ感”が、本家とは違った解釈で付け加えられていて面白い。

あくまでメインはオーケストラが演奏するピンク・フロイドだが、それとリミックスが、互いに持てない部分の魅力を補完しあっている。

ピンク・フロイドの音楽は曲の良さだけでなく音響的な部分も重要な位置を占める、とゆうかマジックとも呼べる緻密さで作られているのでカヴァーなどでいじるのが難しい。そこに果敢に挑戦し再構築した意欲作ではある。

Us & Them: Symphonic Pink FloydUs & Them: Symphonic Pink Floyd

(1995/10/10)

Pink Floyd

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