ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ブラック・メタル

椎名誠 / 新橋烏森口青春篇

高校生時代から、小岩のアパートで共同生活を送っていた頃までを描いた『哀愁の街に霧が降るのだ』の続編にあたるワケだが・・・今回、読み返すまですっかり忘れていたのだが・・・この物語の中盤まで椎名誠はまだ“克美荘”に住んでいるのだ。時系列的には前作の話がだいぶ食い込んでいる。

しかし『哀愁の街に~』は“克美荘”での共同生活が中心に描かれ、主人公の気分もどちらかとゆうとモラトリアムな感じなので、視点的にアパートから皆が去ってゆく終盤は寂しい感じがしたが、こちらはサラリーマンになってからの視点、メンタル的にもそちら寄りで描かれているため、そこのくだりはかなりあっさりと描かれている。

百貨店業界誌の出版社、中小企業の中に蠢く人たち・・・マトモな人からヘンな人まで、様々な人たちとの関わりが描かれていて、新橋とゆう“日本の正しいサラリーマン像の象徴”のような場所で、椎名誠は仕事をし、同僚と酒を飲んだり、ときにはビルの屋上に出て夜から朝までポーカーをやったりしている。朝になって始業時間が近付くと、そのまま屋上から降り、何事もなかったように“出勤”したりするのだ。若いとはいえ、これは凄いな。

話のクライマックスあたりでも、退職人物の送別会代わりに、真冬、クリスマス・イブに会社の屋上でポーカーをやっている。

物語の舞台は昭和41年。『哀愁の街に霧が降るのだ』と比べると社会人になっているのでサラリーマンの哀愁がどことなく漂うが、主人公も若く日本経済が伸びていた頃の話でもあり、そこらへんのパワーも読み手に伝わってきて気持ちよい。

新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)
(1991/05)
椎名 誠

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