S.O.D. / スピーク・イングリッシュ・オア・ダイ (1985)
S.O.D. / Speak English or Die
痛快なアルバムだ。もちろんひたすらハイ・スピードな曲が繰り出されるその内容自体もそうだが、やはりアンスラックスのスコット・イアンを中心としたその“お遊び感覚”、サイド・プロジェクトとして集まり3日間でレコーディングを済ませてしまったという冗談のようなアルバムが、その後メタル、ハードコア双方のシーンに多大な影響を与えているという風通しの良さが痛快。
ヘヴィ・メタルとパンク、それまでも散発的な交流や、影響したりされたりということはあったし、リスナー・レベルでも“どちらかしか聴かない”人もいれば“どちらも聴く”とゆう人もいた。が、やはり当時のザックリとした印象としては“激しく大音量の音楽とゆう共通点があるが、反目しあっている2つのジャンル”といった感じだった。
興味のない人からするとどちらも同じようなモノだが、実際は近くて遠い、どこかの国の国境のような2つのジャンルだった。
そこに、その双方から集まったメンバーで作られたバンドが1枚だけ作ったアルバム(当時)が、シーンに風穴を開けた。
パンクが長髪でもいいしメタルが短髪でもいい。メタルの曲が短くてもいいしパンクのギターがもっとザクザクと刻んでもいい。メタルがブラスト・ビートでもいいしハイ・トーン・ヴォイスじゃなくてもいい(厳密に検証するとS.O.D.以前にもそれなりにあったと思うが、ここは文章の流れ上、スルーするぜぃ) 。
首謀者スコット・イアンのユーモアとお遊び感覚、アイディアの豊富さとそれを実現するバイタリティがなければ、'90年代以降のヘヴィ・ロック、ラウド・ロック界隈の風景は少し違ったものになっていたかもしれない。
アンスラックスとパブリック・エナミーの共演『ブリング・ザ・ノイズ(Bring the Noise)』の件も合わせると、直接影響されたか、意識せずとも間接的に影響されていたのかを問わず、かなり多くのアーティストがその遺伝子を受け継いでいることと思う。
ビッグ・アーティスト同士の共演、コラボレーションなどでも、やっているときには話題だがその後残らないものもある。また、曲単位で語り継がれる名共演もある。
そんな中、このS.O.D.が残した1枚は、音楽のスタイルという形でシーンに残した影響としては突出しているようだ。
Speak English or Die
(2000/02/22) S.O.D.: Stormtroopers of Death |