ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

原宿メモリー

水木しげる / 総員玉砕せよ!

水木しげる氏の傑作戦記漫画の本書には、南方の最前線にいる末端の兵士の日常、死に様が淡々と描かれていて、その淡々としたタッチが戦争の悲惨さ、狂気、玉砕命令の理不尽さを浮き彫りにしている。100%実録ではなく、玉砕の顛末など大幅なフィクションが組み込まれているが、それでこの作品の価値が変わることはない。

兵士達の前線での日常、壮絶な戦死、戦闘以外での死(魚をのどに詰まらせたり、ワニに喰われたり)・・・実際に最前線に末端の兵士として送り込まれた水木氏ならではのリアルな視点で描かれる。

淡々と描かれる多くの死にドラマ性はなく、当たり前のように先ほどまで命のあった人間が次の瞬間、当たり前のようにバタバタと倒れ、屍になってしまう。

馬より下の扱いで消耗品のごとく使い捨てられ、後方部隊の楯となるために死ななければならない・・・玉砕命令なので生き残ることも許されない兵士達の悲しさが、水木漫画のタッチで克明に記されている。渾身の一作だ。

総員玉砕せよ! (講談社文庫)総員玉砕せよ! (講談社文庫)

(1995/06/07)

水木 しげる

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