ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

暗闇の爆撃

五木 寛之 / 雨の日には車をみがいて

主人公が乗り継いでゆく車と、そのそれぞれに関わる女性とのエピソードで構成される短編集じゃ。

舞台は1966年から1987年。

主人公は構成作家や作詞の仕事をしてる。

乗り継ぐ車はシムカ1000、アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スパイダー、ボルボ122S、BMW2000CS、シトローエン2CV、ジャグワーXJ6、メルツェデス・ベンツ300SEL6.3、ポルシェ911S、サーブ96S・・・と、外車ばかりなので、書き様によってはとてつもない嫌味な話になるのじゃが、そこは五木寛之、丁寧で味わい深い心理描写、車のデティール描写で、読んでいて楽しいんじゃ。

スーパーカーブーム以降はとくに外車に思い入れがない我輩でも楽しめた。

だが、今の日本にはフィクションとしてもこの小説に宿るロマンを受け入れる余裕は無いように思うのじゃ。

2010年の日本でこのような時代設定の小説を読むのは麻薬のようで怖いのじゃが、まあいいや。

だって我輩、ノスタルジーで現実逃避するの大好きだもの。

この本が単行本として出版されたのは1988年、その後時代は混沌とした'90年代へ。

'90年代といえば五木寛之氏は、エッセイの人気シリーズ『生きるヒント』を発表してゆくのじゃった。