『3055』が閉鎖しちゃったので、書いた記事をサルベージするよ。
入稿 2013/03/22
Jimi Hendrix / People Hell & Angels (2013)
1. Earth Blues
2. Somewhere
3. Hear My Train A Comin'
4. Bleeding Heart
5. Let Me Move You
6. Izabella
7. Easy Blues
8. Crash Landing
9. Inside Out
10. Hey Gypsy Boy
11. Mojo Man
12. Villanova Junction Blues
ジミ・ヘンドリックスが、1968年から69年にかけて残したスタジオ録音から厳選された、音源集である。ここには、エクスペリエンス以降のスタイルを確率すべく、セッションを繰り返していたジミの姿が克明に記録されている。多くはバンド・オブ・ジプシーズのリズム隊であるビリー・コックス、バディ・マイルスと組んだ演奏。それを中心に、曲によってはエクスペリエンスのミッチ・ミッチェルがドラムを叩いていたり、その他様々なミュージシャンが参加している。プレイ自体の聴きどころというよりは、トリビア的なもので、バッファロー・スプリングフィールドのスティーヴン・スティルスがギターではなくベースで参加しているという曲もある。
ロック・バンド然としていたエクスペリエンスに対し、本作に収録されている頃のサウンドは、ファンクに接近するなど黒人音楽の要素が強くなっている。白人二人を従えたエクスペリエンスに対し、バンド・オブ・ジプシーズはジミを含め黒人三人の編成となったためか、R&Bやファンクのノリを感じる。ロックのスピード感よりも、一定のテンションを保ちながらの反復で聴く者を引き込むような、ファンクなどが持つリズムの特色が色濃く出ている。黒人ミュージシャンとしてロックに革命をもたらしたジミが、あらためて黒人音楽との向き合い方を模索しているようにも思える。
ロック・バンドとして完成されたエクスペリエンスを解体し、次なる方向性を探したジミの思いは、形になることなく本人が他界してしまった。オリジナル・アルバムとは呼びにくい本作には、ジミの考えていた新しいロックのヒント、その断片が散らばっている。それを拾い集めて、その後のジミを想像するのが、楽しい聴き方かもしれない。(Jeff Goldsmith)