ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

六重奏曲

 帝国データバンクは、CDショップ経営のWAVEが6日付けで自己破産申請の準備に入ったと発表した。同社は6月28日付で債務整理に入っていたが、7月末に全店舗を閉店したという。

WAVEは、先日書いた大宮店が閉店したときにはとくにメディアが取り上げるわけでもなく、「HMVは渋谷店が閉店でニュースになったのになあ寂しいなあ」とか思っていたら、自己破産申請のタイミングでYahoo!のニュースに出ていた。それに出たから寂しくないかというと、まあどちらにしてもいいニュースじゃないんだけどね。会社が倒産するんだから。

『ぴあ』の休刊と時期を同じくしてというのも、時代、文化の移り変わりを象徴している気がする。

ええと、なんでしょうね?非常に寂しい。寂しいんですけど、音楽とか文字、写真などの情報って、ディスクや紙からは開放されるべきだと思う。もはや今となっては。

ipodが普及し始めた当時は(…つうか、ipod自体は今も持ってていないんだけど)、圧縮ファイルの音質や、あまりに簡単にアルバム製作者の意図と関係なく編集、選曲できるのもいかがなものかと考えたりして、その類のもので音楽を聴くのはライト・ユーザー向けのシステムなんじゃないかと思っていた。しかし、ここへ来てストレージの大容量化もあって、持ち歩くのはともかく、自宅で聴く分には容量を気にせずロスレスで保存できるし、俺ももう「うわーitunes超便利!」という状態になっている。CDを購入してもまずやることといえばPCに取り込む作業だったりする。将来はクラウドかが進み、データを手元に保存するという概念すら薄れてしまうかもしれない。

ディスクで聴いていると、音楽好きだから所有CDの枚数が増えてくるのに、あまりに増えるとどんなに整理整頓して保管しても、「あの1曲だけ、今すげー聴きたい!」と思って聴こうとしたとき、押入れの奥に入っていたりして聴けなかったりするんだよね。雑誌、書籍も同じ。過剰に増えると手に取れない。 ディスクというフォーマットは淘汰されると思う。

だからCD屋も本屋もどんどん潰れてしまえ!ということではないのだけれど。

CDの需要が爆発的に増えた1990年代前半頃は、ショップに行ってあれこれ見るのが本当に楽しかったし、それがなくなるのは寂しい。しかし、現状を嘆いて新興勢力の何かを仮想敵に見立てて攻撃したり嘆いたりはしたくない。

だって、CDやらCDショップやら雑誌、書籍やら本屋がなくなって寂しいのは世代、体験の主観でしかなく、今の俺が、炭鉱がなくなったり氷売りのおじさんが歩いて売りに来る風景がなくなったのを、今現在すんげーーーーーーーーーーーー寂しく悲しく思っているかといえばそうでもないからである。普段、チョンマゲ頭の町人とすれ違わないのも悲しくない。何故なら俺はそれよりはるかに下の世代だから。

東京大学「80年代地下文化論」講義東京大学「80年代地下文化論」講義

(2006/07/18)

宮沢 章夫

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