ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

Desperate Angel

TAIJIが、波乱に満ちた人生の幕を下ろしてしまった。しかも、その波乱を地で行くような衝撃的な幕引きだ。

なんとも言いがたい、やるせない感じだ。何なんだよもう。

当初は“歌謡メタル”どころか“スピード演歌”と嘲笑されていたXだが、「なんだか最近すごいらしい」と話題に上るようになって、ライヴで無料配布された『紅』のビデオが回ってきたりと事前情報が少しずつ増えていく中、ライヴを初めて観たのは1988年の年明け、まだ正月気分が若干残っている1月10日。中野公会堂で開催されたメタル・インディーズのイベントにトリで出演したのがXだった(共演はデランジェアウトレイジなど)。

金色の怒髪が天を突く5人組が繰り広げるステージは圧巻だった。このときのメンバー個人個人の印象だと、TAIJIよりも、エフェクターの調子が悪く、演奏開始直前に怒ってそれをブン投げてるHIDEの方が記憶に残っているかな。

 

その後、インディーズからフル・アルバム『Vanishing Vision』が出て、同じく中野公会堂、今度はワンマンで、このときは運良く最前列で観ることができた。席が下手、つまりTAIJIとPATA側で、客席はみんな熱狂状態なんだけど、さらにTAIJIは「もっと来いよコノヤロウ!」的に、噛み付くような感じで煽ってきたので怖いくらいだったのを覚えている。

 

同じ年のツアー、今はなきライヴハウス“大宮フリークス”で、たしか2回観ていて、そのうち1回はセキュリティのバイトだった。前にも書いたが、過密状態のフロアをロープで前後に仕切って、後ろの客を抑える役目を命ぜられたのであった。

終演後、客もいなくなってからトイレに入ると、TAIJIがメイクを落としている最中で、周りを一緒にバイトした高校生達が囲んでるんだけど、なんかみんなビビって声もかけられない。でもなんか見てるみないなヘンな状況が発生していたな。

その後Xは怒涛の快進撃。渋谷公会堂、日比谷野音、武道館、東京ドームと…会場のキャパシティが拡大するごとに各1回は観てるのか。

東京ドームは3DAYS開催の最終日に観て、当日はまだ伏せられていたけど、結果これがTAIJIの脱退ライヴとなった。

ただ、ドームをやる頃にはちょっと引いた感じで観るようになっていて、そうなると周りは失神者が出るほどの熱狂であるから、その温度差が少し辛い部分もあった。これが最後になったので、バンド名に“JAPAN”が付いてからのXは観ていない。

Xの核はYOSHIKIのメロディであることは間違いないけれど、その後の作品はバランス感覚が少し変わってしまったようにも感じる。と、いうことはクレジットに反映されている部分、されていないところも含め、アレンジなどでTAIJIの存在は大きかったのだろう。TAIJI在籍時に出たアルバムの配置を見ても、YOSHIKIの曲群、泣きのメロディが並ぶ中で、TAIJIが打ち出す武骨だったりテクニカルな面がピリリと効いているのだ。

以降、波乱万丈の人生は…東京ドームで演奏するスター・プレイヤーで、ラウドネスのメンバーに絶賛されるほどの腕前があり(ひぐっぁんももう故人か)、それでも人生はままならぬものだ。

ベースのボディに描かれたフェニックスも、とうとう羽を閉じてしまった。

人が死んで「安らかに」とはよく言うが、TAIJIの件に関しては切実に当てはまったりする。「せめて安らかに」と思わざるを得ない。

どうか安らかに。

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(2008/07/15)

X Japan

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