ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

吸血鬼伝説

世界糖尿病デー記念『そのとき!!…何が起こったか』

に続いて、5回目だぜ。

当時のブログを見ると、入院初日の1月18日、「今日から入院するハメに…」とだけ書いてあり、ちょうど1週間後の1月25日まですべての更新が途絶えている。

入院中、25、26日に少しだけTwitterにつぶやきの投稿があり、27日からはけっこう頻繁につぶやくようになっている。その間更新、投稿が途絶えてしまったのは、その間ずっと昏睡状態で生死の境を彷徨っていたから…ではなく、27日までは手元に携帯電話の充電器がなかったからだ。入院する際、充電器を持参していなかったので有事のときのためにバッテリーを温存していたのだ。…もう既に有事だし、それ以上緊急のことも起こるわけないんだけど。

それで、25日までの間は何をやっていたかというと…すっかり体力がなくなってしまったので基本的にはベッドの上にいるだけだったが、苦しくてウンウンと唸っていたワケではない。本当に苦しかったのは最初の一昼夜で、あとは寝っころがったり半身起こした姿勢で読書をしたり、イヤホンでラジオを聴いていたのであった。

椎名誠『全日本食えばわかる図鑑』をはじめとして数冊の文庫本を持参していたが、途中で全部読み終わってしまった。これはまいった。さすがに一日中ラジオだけだと飽きる。まさか2週間も入院するとは思っていなかったし。

持参したものを読み終わってしまってからは、仕方なくロビーにある本棚から借りてきて読んでいた。

有料のテレビは意地になって観なかったので、ポータブルラジオは重宝した。あ、有料といえば冷蔵庫もテレビと同じカードで動くんだった。なので冷蔵庫も使わなかった。

で、ラジオね。普段車や散歩中に聴いているNACK5TOKYO FMを中心にいろいろ聴いていた。自宅での電波受信状況が良くないので少し遠ざかっていたAMラジオの方もここぞとばかりに聴いた。昼には国会中継も聴いたし、明け方に目が覚めてしまったときには『走れ!歌謡曲』も聴いた。しかし、ある日突然、AMのチャンネルだけが聴けなくなってしまった。窓際に持っていっても聴こえない、電池を換えても聴こえない…壊れた。FMは聴けるからいいのだが、聴けないと思うとよけいにAMが恋しかったなあ。けっこうな痛手だった。

そこで神は我を見放さなかった。前述した、携帯電話の充電器が届くと、もう好き放題ワンセグを観ることが出来るのである(病室内では電波OFFモードにしようね)。それからは、娯楽の面ではFMラジオに飽きればテレビ、テレビに飽きれば読書といった感じで、多少充実した生活が送れるようになった。

ただ、すべてこんな緊張感のない入院生活だったワケじゃないぜ。

怖かったのは夜中にきた″低血糖”だ。高血糖で意識障害まで起こして運び込まれたが、入院し、治療に入ってしまえばそんな高血糖になることはまずない。しかし、食事の量、インスリン注射の効き具合などの要素のバランスによって血糖が低くなりすぎることが稀に起こる。もし放置すれば昏睡状態に陥ることもある。それが何日目かの深夜に起こった。

夜中にうなされて目が覚め、室温は暑くないのにやたらと汗をかいている。空腹感、倦怠感も凄い。こういった症状が出るかもしれないということは事前に聞いていたので、自分で血糖を計ってみると、やはりかなり低い。ナースコールを鳴らし、状況を話すと看護士さんがとんできて、ブドウ糖タブレットを一粒くれた。「これを飲んで」と言われたので…500円玉くらいあるやつをゴクリと…飲んじゃったよ!後から冷静に考えたら、噛み砕いて飲んでもいいのね。早く言ってよ!血糖が下がって判断力が鈍っているのと、初めて体験する変調による恐怖で、慌ててしまって分からなかったのだ。低血糖は入院中、あと1,2回起こったが、打つインスリンの量を調節することでほどなく解決した。

食事は順調にフツウっぽいものになっていった。1週間目でおかゆがご飯になったけど、なんか自分から申し出ればもっとはやく変更できたみたいね。入院中は自分でもビックリするくらい食事のことばかりを考えていた。俺は普段は基本的に少食だし、食べ物に対して執着がない方なのだが、入院中は食欲が回復してからは食べ物がもう恋しくて恋しくてたまらなかった。

好き嫌いはそんなにあるほうではないが、家では積極的に食べようとしない類の料理でもとにかく残さず食べた。魚を食べるときにちょっと崩れてしまった数ミリの破片も見逃さず食べた。そして、困ったことに食後10分もすると次の食事が超待ち遠しくなってしまうのだ。1階に売店はあっても、口寂しくなったからといってお菓子を買ってきて間食することができない…ラジオと、入院終盤にワンセグテレビも導入されたものの、基本的にはベッドの上だ。退屈なのも手伝って、常に食への欲望と格闘していて、気を紛らわすのがタイヘン。食事予定時間が近くなると廊下から聞こえてくる配膳ワゴンのガラガラ音を今か今かと待ちわびていた。

100125_1819~0001

風呂は入院3日目に初めて入れた。自宅で床に伏せっていたときから数えると1週間ぶりぐらいだろうか。入院中は湯船には一度も浸からなかったな。シャワーだけで済ませてしまった。最初にシャワーを浴びたときはさすがにすっきりした。だが、それ以降はけっこう億劫になってしまい3日に一度ぐらいのペースになっていた。替えのタオルとか下着も際限なくあるわけではないし…

もちろん普段家では毎日入ってるよ!

そんな感じで入院生活にも慣れ、相変わらず体力は戻らないが体調は良いので、一日中ベッドの上で過ごす退屈や食欲との闘いという感じになってきた。途中からはインスリン注射も血糖測定も自分でやるようになっていた。あとは退院を待つだけだ。

…しかし、入院から10日目の朝、突然運命の、衝撃の言葉が医師から告げられたのであった。

―う~ん、まだ続く―

シュガーな俺 (新潮文庫)シュガーな俺 (新潮文庫)

(2009/09/29)

平山 瑞穂

商品詳細を見る