ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

デリヴァー・アス・トゥ・イーヴル

椎名誠 / 銀座のカラス

『哀愁の町に霧が降るのだ』『新橋烏森口青春篇』からさらに続く自伝的小説の続編では、椎名誠ら登場人物が実名ではなく架空の名前をあてられていて、さらに目線も一人称から三人称に変化しているので、前の作品から連続して読むと、最初は違和感が物凄くあった。

まあそれも上巻の半分ぐらい読めば、話の筋、文章の面白さに引き込まれ気にならなくなるが。

そのように、思い切って成り立ちを変えているのでフィクション性が強くなっているが、織り込まれているエピソードについては実話と創作の割合はそれまでの2作と比べて大幅に変わっているのだろうか?

椎名=松尾は小さな出版社に入ってまだ約1年だが、前任者の退職により編集長になったり、社外の人間とのやりとりも多くなったり、部下が出来たりと、社会人度が上がってくる。

・・・かと思えば、街で喧嘩をして逮捕されたり、万引きを疑われて捕まったりと相変わらずそういった出来事の火種となる要素はあるようだ。

“克美荘”でハチャメチャな共同生活をしていた頃より、そして前作で描かれた新入社員として働いていた頃よりいろいろメンドクサイことも多くなり、随所に「まあいいやどうだって」とゆう心の声が登場するが、このセリフは本を読んでからしばらくお気に入りとなって、自分もつい心の中で「まあいいやどうだって・・・」と言ってしまうことが多かったな。

ここまでの3部作の中では本作が一番の長編で、『哀愁の町に霧が降るのだ』も長いが、あちらは物語の合間にかなり、時空を超えた“現在”のことが挿入されている。本筋の長さでは圧倒的にこちらの方が長い。

まさか自分が、400P超×2(上下巻)のサラリーマン小説にぐいぐい引き込まれて読んでしまうことになろうとは、ラバーソールとブラックスリムジーンズを履いて街を歩いていた昔には思わなんだよ。

銀座のカラス〈上〉 (朝日文芸文庫)銀座のカラス〈上〉 (朝日文芸文庫)

(1995/07)

椎名 誠

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銀座のカラス〈下〉 (朝日文芸文庫)銀座のカラス〈下〉 (朝日文芸文庫)

(1995/07)

椎名 誠

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