ジェフ・ゴールドスミス日記

ファッションとグルメ以外のこと。

ディグが電話に出た時のイヤーエイクはご機嫌だったぜ

Mr. Children / 深海 (1996)

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1996年にMr. Childrenがアルバム『深海』を出したときの、リスナーの期待感、飢餓感はそうとうのものだったと記憶しております。

CDは通常、発売日に設定されている日の前日、お昼前後にお店へ入荷しますよね。

その日の正午頃、お店のフロア方々に散って、所在無くウロウロしていた人たちが、商品の入ったダンボール到着と同時に、ワッ!っとレジカウンターに群がってきたんですよね。全員ミスチルを待っていたワケです。

その光景はまるでゾンビ映画を観ているようでありました。

その後も日本では数々のメガ・ヒット、モンスター・アルバムが生まれましたが、人がワッ!っと襲ってきたのはこのアルバム以降経験がありません。

CD売るのに人が一度にワッ!っとなって焦るのはライヴ会場での物販ぐらい。

前作『Atomic Heart』やその後のシングル曲のヒットで“現象”と化していたミスチルですが、そのタイミングでこの内省的でしかも重い内容のコンセプト・アルバムを出すとゆう判断をレコード会社はよくOKしたなぁ、なんて思います。

一歩間違えれば獲得した大勢のファンを失いかねません。

音は前作と対照的にアナログ・サウンドとなっていますね。

曲間のないこのトータル・コンセプト・アルバムは、海に入っていくSEから幕を開けますが、これはまんまピンク・フロイド『欝』のオープニングですね。

次に来る、アルバムの雰囲気を象徴するナンバー、『シーラカンス』。スローからアップ・テンポのシャッフルに展開し、スライド・ギターが入ってくるあたりは同じくフロイドの『クレイジー・ダイヤモンド』。リフ・パートのギターはニルヴァーナ、ドラムはジョン・ボーナムといった具合です。

ドラマの主題歌だったシングル曲『名もなき歌』は、このアルバムの中にあって比較的それまでのミスチル的曲調を継承しているように思います。

『So Let's Get Truth』はボブ・ディラン(もしくは長渕剛)的なアコースティック・ギターの弾き語りで、声までディラン風になっています。

後にマキシ・シングルとなった『マシンガンをぶっ放せ』は歌詞に“毒蜘蛛”というフレーズが出てきますが、若い人に一応説明しますと、これはその頃起こった、本来日本に生息しないはずの“セアカゴケグモ”が多数発見されたとゆう事件を受けての歌詞です。

『ゆりかごのある丘』のイントロはフロイドの『クレイジー・ダイヤモンド』っぽいですね。この曲のアウトロでも「シーラカンス」とゆう言葉が出てきますが、アルバムの中で同じフレーズや歌詞が各所に組み込まれて再登場するのはのは、これまたフロイドのアルバム『炎』、『ザ・ウォール』、『アニマルズ』あたりで使われた手法ですね。

シングル曲ですが、『ナもなき歌』よりアルバムの雰囲気に近い『花 -Memento Mori-』を挟んでエンディング曲『深海』へ。この曲のギター・ソロは『レッド・ツェッペリンⅡ』の『サンキュー』ですね。ジミー・ペイジのソロはアコギですがこちらの田原氏はエレキです。インタビューではジョー・ペリーと言っていますが、これはペイジだと思う・・・

ミスチルはこの後、それまでのヒット・ナンバーが半数を占めつつもあと半分はヘヴィな心情を反映したような曲とゆう構成の『BOLERO』をリリース、東京ドーム公演を敢行し活動休止に入るわけですが、このライヴも、アルバム全曲再現、スクリーンに映す映像の使い方など、フロイドがアルバム『対』リリース後に行い、名盤『狂気』を演奏したツアーをかなり意識しているようでした。

メンバー自身、『深海』リリース前のインタビューでしきりにフロイドのデヴィッド・ギルモアツェッペリンのボンゾ、ニルヴァーナジャニス・ジョップリンなどロック・ジャイアンツの名を挙げています。

『深海』のシリアスさは、桜井氏自身の葛藤が投影されていますが、この前年、1995年は震災やテロが列島を震撼させ、年数的にもいよいよ世紀末が見えてきたとゆう時期。その世相、皆が抱えていた不安も大いに反映しています。

こんな、決して口当たりが良いとはいえないテーマを持ったアルバムですが、結果的には270万枚以上のセールスを叩き出したそうです。

アルバムのアイコンとして登場するシーラカンスですが、先日近所を散歩していたら、用水路の中で何か大きな生物がうごめいていたんですよ。「シーラカンスか?」と思ってびっくりしたんですけど、よーく眼を凝らして見たらただの河童でした・・・

・・・司会:加羅ん部留亀太郎竹中直人「そっちのほうが・・・すげーーーーーー!!!」

  回答者席全員「そっちのほうが・・・すげーーーーーー!!!」

深海深海

(1996/06/24)

Mr.Children

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